孤独美乳少女の話
第16話 ジョブ:幻想殺し(仮)
一時的な暑さは姿を消し、過ごしやすい期間がまた訪れた。
これから始まる本格的な夏に向け、そろそろ衣替えをしなくてはならない。
「今日から体育の授業はB組と共同となる。各自、種目を選んで場所移動するように」
ホワイトボードに張り出された種目表。
バレー、バスケットボール、卓球、ソフトボールなどなど。
無駄に広い校舎敷地を目一杯使用出来るように多種多様な種類が揃えられている。
「皆でソフトボール行こうぜ!」
「バレー一緒にやってくれる人ー!」
「卓球楽そうじゃね?」
一度選んでしまえば、一ヶ月程度は種目変更が出来ない。
なるべく人の多い、
間違って少人数のグループに混ざろうものなら、体育という地獄の時間を毎週三回は味わう事になる。
「今年の一年生はバスケットが多いか。バレーの人数がちょっと足りないように感じるが、まあ良いだろ」
選んだのは勿論バスケットボール。
木を隠すなら森の中、という
怠惰的に過ごしたい連中や運動苦手な文化部生徒がごそっと男女混合バスケットボールに移動した。
このビックウェーブを逃す程、俺は愚かでは無い。
「バスケットボールを選んだ生徒についてですが、まずは第二体育館に移動して準備運動をしていてください。その後、ペアで練習を開始します」
笛の音に背中を押され、多数の者が移動を始める。
仲の良い友達同士でペア作りを行う生徒たち。
必然と孤立する奴が現れる。
「ねぇ、私と一緒にペアお願いして良いかな?」
「……俺か?」
「だって一人なんだよね?」
休憩時間を遮られた。
ボッチとペアを組もうとする者などいない。
必然的に練習時間は休憩時間へと姿を変える……筈だった。
「分かった」
「よろしく!」
授業という大義名分はあちらに有る。
ここで下手に抵抗しても無駄。
余計目立つだけだ。
「えっと、上条君で良いのかな?」
「誰だそいつは。俺の名前は一条だ」
「幻想〇しじゃないの?」
「幻想なんて殺すかよ。殺すならこの腐った現実の方だ」
幻想は常に殺されている。
人に、金に、時に。
成長にするにつれて突き付けられた現実は皆の幻想を殺す。
彼等に味方はいない。
いつも孤独で、強大な現実という悪魔に立ち向かっているのだ。
「……くくっ、あははは!」
「いきなり笑い出してどうした」
「いやぁ、噂通りの変人だね」
目尻に涙を浮かべて笑う女子生徒。
ツボに入ったのか、腹を抑えながら笑い続けている。
「ふぅ、油断してたら過呼吸になって死にそうだよ」
「随分浅い笑いのツボだな」
「うん、自分でもびっくり」
「同感だ」
笛の合図を基に練習が終わった。
結局何もしていない。
サボれたことを喜ぶべきか、それとも”面倒”というオーラを纏った女子生徒に出会ったことを悔やむべきか。
「あ、終わっちゃったね」
「だな」
”出会い”の神様はいつも”面倒”と一緒に押し売りを始める。
断り切れない
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