第4話

比較的門から近い私達の店は混雑することが想定された。しかし、その想定を覆す程の客が店の中になだれ込んで来た。フロアに所狭しと並べられたテーブルはあっという間に埋まり、従業員全員が立って居られるようなスペースがないくらいに、店はぎゅうぎゅうだった。

私と親友は2人で店の外に出た。(今考えてると、なぜここで接客をせずに外へ出たのかよく分からないが、何分夢の中の話なので辻褄が合わない所が少々ある。)


こうして外へ出てみると通りのなんと人の多いことか。さっきまでまさしくゴーストタウンだった町がえらい賑わいである。


ピザ屋のすぐ右の曲がり角には、大きな階段があった。混雑する店々と通りをよそに、その大きな階段だけはひっそりとしていた。たくさんの人が行き来できるであろう、とても大きく幅の広い階段には、チラホラとしか人がいない。

私達は人混みを避けるようにしてその階段に降り立った。下の通りを見てみると、同じく多くの人が行き交っていた。

私は辺り見回してキョロキョロとしていて、親友はぼんやりと人混みを眺めていた。



周りを見てみると、店という店の全てが飲食店であることに気がついた。しかもそれは、フライドポテトや焼きそば、ホットドッグなど、ありがちな文化祭の出し物程度の店だった。ピザなんて出しているのは私らの店だけだ。働いた後だからお腹が空いてきた。

「何か食べようか。」と私は親友に声をかけた。彼女は、うん、と頷いた。

「何が食べたい?」

と聞くと、

「何でもいいよ。」

と答えた。食いしん坊で素直な彼女のことだから、遠慮しているのだなとすぐに分かった。

「食べたい物があるんだったら言って。」

私はもう一度彼女に問いかけた。すると、少しためらいながら彼女は答えた。

「ハンバーグが食べたい。」

私は吹き出しそうになるのを堪えた。

「オッケー、ハンバーグね。」


しかし、どうやってハンバーグを食べようか。人混みをかき分けてあちこちの店を覗いて見ても、恐らくハンバーグを提供している店は見つからないだろう。どうしたもんかとふと前に目をやると、そこには青空があった。ここは室内だったのか、屋内だったのか。あの空は偽物なのか本物なのか。そのことについては何も分からなかったが、どこまでも続く見事な青空がそこにはあった。

そして空と同じように、この風情溢れる美しい町並みの向こうには、沢山のビルが連なっていた。都会のビル群が、ゲームの世界に迷い込んだかのようなこの不思議な町の向こう側に溶け込んでいた。それはなんとも言えない不思議な光景だった。


私はそのビル群の中にショピングモールを見つけた。果たしてそれが本当に存在するのかどうかも分からないのに私は、「あそこに行けばハンバーグが食べられるかもしれない。」と思った。私は親友に、

「あそこならハンバーグ食べられるかもしれないよ。」

と言うと、彼女はぱあっと目を輝かせて、

「本当に?」

と言った。私は微笑んで頷き、人混みの間を縫うようにしてショピングモールに向かって歩き出した。

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