触れたからこそ、みえた世界。

戌井てと

道案内は大変だ。

 たぶん、お互いの性格の仕業しわざなんだ。


「奥さんに先立たれても、がんばる旦那さんは居るでしょ」


「いや、そうじゃなくてさ。残った側がどう感じてるかって事でね」


「主婦病? なにそれ」この一言から、答えや正解への探しものがはじまった。

 表紙に三浦しをん、とよく見掛ける名があったという理由だけで、私はそれを手に取った。そしたら、母がタイトルに突っ込みを入れていたのだ。

 お互いが一致したのかは知らない、「立ち読みするなら買いな」まぁ、他に買うものもあるし、長居はできない。あとがき読んどけば大体掴めるはずなんだよね。


 帰宅してすぐに開く。今度は素直にさいしょから。“奥さん” “妻” “お母さん”呼び方はいろいろにしておこう。視点としては子どもから見た、母の居ない日常。そこまで悲しく感じないのは作者の書き方、なんだろうな。淡々としている。

 だが、いつも居たところに母が居ないこと。いつも通りに、が酷く不自然に映ってみえること。数ページだけ目で追った。『主婦病』というタイトル、なんとなく分かったような?


 私が読んだ、私の立場での感想を母に言ってみた。それが初っぱなの展開に戻る。

 どこか攻撃的に受け取ってしまったのは、母が、“その立場で”、聞いて感じたことだから。

 ふと、私の心は着地した。物語、正解なんてあるんだろうか。そういうのじゃ無いでしょ。


「言葉で説明って、難しい」


「あはは」


 何かと白黒はっきりしたがる、完璧主義の母。それは私もで。私が知らない世界を見てきて、物事に対する考えも違う母からでた、渇き見通した笑い。


 教科書ではない。でも確かに学べる要素がある話。納得させようと、知っている言葉を探すも、力尽きた。


 タイトルを検索して、レビューの欄を押した。やはり主婦が軸の話なんだろうか。子ども目線から辿ると、分かる文章が多かったんだが。

 あとがき、というか解説には、年代関係なくとある。誰が読んで、「あー、わかる!」という反応があるのか。


 趣味であれ、書き方をさがして勉強はしてきた。誰が視点か、選ばれた言葉の重み、響き、そういうのに意識が向く。それもありだよねと、クッションを置きたくなる。

 一方で母は、『何歳になったら〇〇をしなさい』だとか、実践向きの本が多かった。読み込んでいくのは、単調で面倒な作業なのかも知れない。それと、文字からではなく直に感じてきたから、“そういうもの”で終わると言いたいのかも。


 その世界を少しでも触れている目からみた景色。みて欲しい気もするんだけどな。難しい。

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触れたからこそ、みえた世界。 戌井てと @te4-3

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