第7話 あおいとあおい

「間もなく電車が発車いたします。

ご乗車の方はお急ぎ下さい」

ゆかりさんが、迎えに来た。


「さあ、行くわよ。おふたりさん」

ゆかりさんは、帽子を被っている。

完全な、お仕事モードだな。


「お兄ちゃん、行こう」

「もう、行くのか?」

「うん」

あおいに手を引かれて電車に乗り込む。

何年ぶりかな・・


「他にも、たくさん人が乗り込むね」

「あの人たちも、生まれ変わるんだよ」

「そうなんだ・・・」

大勢いるが、皆笑顔だ。


「冥くん、あおいちゃん」

ゆかりさんに、声をかけられる。


「おふたりは、この車両にどうぞ。貸し切りです」

「あっ、ありがとうございます・・・で、いいのでしょうか?」

「はい」

笑顔で答える、ゆかりさん。


電車に乗り込み、あおいと2人で話をした。

いろいろな事を話した。


でも、時間は過ぎる。


しばらくして、ある駅に止まった。

知らない駅だ。


「じゃあ、私はここで下りるから。お兄ちゃん、約束忘れないでね」

「ああ」

あおいは、下りていった。


「どうだった?冥くん、この電車」

「ええ、気にいりました」

「またのご乗車、お待ちしています」

遠慮しておく。


しばらくして、元の駅についた。


「冥くん、ここからはこれまで通りだよ。

自分の生活を、大事にね」

「はい。でも、ひとつ訊いていいですか?」

「何?」

「ゆかりさん、あなたは何者?」

ゆかりさんは、笑顔を向けるだけで、答えなかった。


こんな話、誰も信じないので、心の中にしまっておこう。


そこからは。普段通りに学校へ行った。

そして、帰宅したら、電話があった。


おじさんとおばさんからだ。

なんでも、いとこのお姉ちゃんに、娘が生まれたそうだ。


妊娠とは聞いていたがめでたい。


そして、頼まれた。

赤ちゃんの名前を、あおいにしていいかと・・・


断る理由もない。

僕は、心から本心を告げた。


【ぜひ、つけてあげてください。こちらから、お願します】

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界への旅路 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る