第2話 ゆかりさん

「隣、いいですか?」

「ええ」

車掌さんは、寄り添ってきた。


ロングシートを貸し切り状態で、若い女の人と座るのは、

照れくさい。

若い女の子の匂いが、漂ってくる。


シャンプーの香りかな・・・


「学生さんですよね?もちろん」

「ええ、高校2年です」

「その制服は、I高ですね。私も、出身なんです」

「先輩なんですね」

まあ、地元だから、珍しくもないな・・・


「ああ、敬語は疲れる」

なんだ?どうした?


車掌さんは、帽子を取った。

髪を束ねていたのか・・・

長い髪が、なびいた。


「ねえ、君はなんて、名前なの?」

いきなりタメ口ですか?

「僕は、冥・・・界沢冥(かいさわ めい)です。」

「私は、向井ゆかり。よろしくね、冥くん」

「よろしく、向井さん」

「ゆかりでいいよ」

「よろしく、ゆかりさん」

ゆかりさんは、手を差し出してくる。


「あっ、このままじゃ、失礼ね」

ゆかりさんは、手袋を外した。


「あらためて・・・」

ゆかりさんは、包み込むように、僕の手を握った。

やわらかい・・・


「この仕事も大変でね」

「ですよね・・・」

確かに鉄道関係の仕事は大変だろう。


中には、態度の悪い職員もいるが・・・

あんたらに、鉄道オタクの事を、悪く言う資格はない

間違っても、言葉には出せないが・・・


「そういう意味じゃなくてね」

「はい」

「私の本当の仕事は、駅員じゃないの」

「えっ?」

そんな気はしていたが、危惧であることを祈った。


でも、やはり何かあったのだ。

この電車には・・・

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