第3話 冥界行き

「この電車はね」

「はい」

「冥界行きの列車なんだ。私はその、ナビゲーター」

少し違う気もするが・・・


「冥界と言っても、君は死ぬわけじゃないから安心して」

「じゃあどうして、冥界に?」

ゆかりさんは、続けて答えた。


「冥くんには、妹がいたんでしょ?」

「ええ、3年前に亡くなりましたけどね」

「仲、悪かったんだよね?」

「ええ、顔を会わせれば、喧嘩ばかりしてました・・・でも・・・」

「でも?」

「誕生日や、兄の日には、忘れずにプレゼントをくれました。」

「好きだったんだね」

「そうかもしれませんね。このストラップも、妹からのプレゼントです。」

そう、このストラップは、妹がお小遣いをためて、僕だけのために作ってくれた、

世界で、たったひとつのストラップだ。


ストラップは、僕のオリジナルキャラクター。

普段は、生意気だったが、このキャラクターだけは、とても褒めてくれた。


「お兄ちゃん、絶対メジャーになれるよ。国民的キャラクターになれる」


その一言が、励みだった。


「実はね、冥くん」

「何ですか?ゆかりさん」

「君をこの電車に乗せたのはね・・・」

「はい」

次の言葉に、絶句した。


「君の妹さんに頼まれたからなんだ。あおいちゃんに・・・」

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