第19話 座右の銘:無理というのは嘘吐きの言葉
その後、一週間ほどの時間を掛け、一通りの事はできる環境を整えた。
そして今日から遂にグレイスの魔導剣士の修行が始まる事となったのだ。
「よし、今日から魔導剣士の修行を始める」
「はい!よろしくお願いします!」
「まず午前中は筋トレだ!」
「え?魔法の練習じゃないのですか?」
「当たり前だろう?体力は冒険者の基本だ。魔導士だって討伐遠征の時は荷物を背負って歩くんだぜ?」
「あ、そう言えばそうですね・・・」
街で見かけた冒険者には魔導士装備の者もいたが、皆それなりに筋肉はついていた事をグレイスは思い出した。
「まぁ、俺と同じレベルになる必要は無い。スピードとスタミナ重視で鍛えろ」
「はい、頑張ります!目標はどうしましょうか?」
「んー、そうだな・・・逆立ち親指走で100mを10秒、50kmを2時間くらいでいいんじゃねぇか?」
「あはは、そんなの出来るわけないじゃないですか」
「そうか?」
冗談としか思えなかったグレイスは思わず笑ってしまったが、アーノルドは逆立ちするといきなり親指だけで爆走を始めた。
「な、出来るだろ?」
もちろん走りながら、何でもない風に言ってのけた。
「無理ですっ!」
「すぐに諦める奴だな。いいか、お前には・・・」
「気持ち悪いので普通に話して下さい・・・」
「失礼な奴だな。まぁ、いい・・・とうっ!」
アーノルドは親指ジャンプで空高く飛び上がり、グレイスの目前に華麗に着地した。
「お前には俺の故郷に伝わる言葉を教えてやろう。俺の座右の銘でもある」
「はい、どんな言葉ですか?」
「感動して泣くなよ?それはな”無理というのは嘘吐きの言葉”だ!」
「・・・」
グレイスは呆れてものも言えないらしい。
アーノルドはそれを感動の余り言葉を失ったと勘違いしたようだ。
「どうだ素晴らしいだろう?俺の故郷の村は旧文明の遺跡がある山の麓にあるんだが、そこに旧文明の頃から語り継がれている有り難い言葉なんだぞ!」
「は、はぁ・・・よろしければ全文を教えていただけないでしょうか?」
アーノルドは誇らしげに胸を張っているが、グレイスは何か解釈を間違っているのではないかと疑っているようだ。
「そうか!お前も興味を持ったか!いいだろう、教えてやる!」
曰く、
・無理というのは嘘吐きの言葉だ
・途中で止めてしまうから無理になる
・鼻血を出そうがブッ倒れようが、とにかく全力でやる
・そうすればもう無理とは口が裂けても言えない
・実際にやったのなら無理というのは嘘だった事になる
「どうだ、素晴らしい教えだろう?」
「えっと、本当に旧文明から伝わる言葉なんでしょうか?」
「もちろんだ。Wアタミという巨大グループを作り上げたミッキー・ワタナーベという偉大な男の言葉だ(作者注:実在する団体や個人とは一切関係ありません)」
「出来るようになる前に死んでしまったらどうするんですか?」
「それは自己管理が出来なかっただけだから、自己責任らしいぞ」
「なんとなく、旧文明が滅んだ理由が分かったような気がします・・・」
「ん?いきなり妙な事を言う奴だな。とにかく、出来るまでやれば出来ないなんて事はないんだ!」
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