カーニバる!

明日は俺たちの大切な息子サブローの待ちに待った10歳の誕生日。盛大にお祝いしなければ。「なあ、サブロー」「ん?なにパパ?」「明日で10歳だな」「うん!」まだシワの1つも無いつるつるな肌をくしゃっとさせて笑うサブロー。

「サブローの10歳の誕生日パーティを楽しむため、一緒に部屋の飾り付けをしよう」「うん!」澄んだ瞳を輝かせて返事をするサブロー。よし、明日のために頑張るぞ!

「ママ、この紙飾りは向こうに付けて!」「はいはい!」「この風船はここの扉でいいか?」「パパ、もうちょっと右!」俺、ママ、サブローの3人でリビングの飾り付けをし、3時間後、ようやくサブローも納得のいく部屋が出来上がった。


「よし!完成!」サブローは嬉しそうに部屋を見渡す。

「パパは疲れちゃったぞ」そう言って俺はソファに座り、テレビをつけて休憩した。なんたって、ずっと立ちっぱなしだったからな。

ぼーっとテレビを眺めていると速報が流れた。

「○○県△市□町で脱獄した死刑囚が逃走中。なおこの死刑囚は子供ばかりを狙った殺人を犯していました。絶対に子供を1人にしないで下さい」

「おい、これ家の近くじゃないか?」「ほんとだ!」

ママと一緒にテレビに写っている映像を確認する。見慣れた風景。まさか近所に殺人鬼がいるのか?それも子供を狙う殺人鬼が。

「サブロー」「なに?」「絶対に外にでるなよ」「分かった」

ここまで、大事に大事に育ててきたサブローをとられてたまるか。


今日は僕の10歳の誕生日。朝起きて昨日飾り付けした部屋を見ただけでとても楽しい気分になっていた。「ちゃんとお留守番しててね」パパとママはそう言うと、2人でお買い物に行ってしまった。多分プレゼントを買いに行ってくれてるんじゃないかな。

「うーん、ひまだな」

お家に1人で残されてから、かれこれ5時間経っていた。ひまつぶしにしていたテレビゲームにももう飽きてきてしまったので、僕はついパパとママの約束を破ってしまった。そう、ボール遊びをするためにお外に出て、公園に向かったのだ。

公園で壁にボールを蹴って遊んでいると、知らないおじさんに声をかけられた。

「きみ、おじさんと一緒に遊ばない?」

僕はとっさに走って逃げ出した。昨日パパとママが言っていたサツジンキに違いないと思ったからだ。全速力で走った。公園にボールを置いてきちゃったけどそんなことは気にしない。とにかく走って走って家に帰った。

「パパ、ママ!」

家に着いてパパとママに抱きついた。まだ心臓がバクバクしている。けど、無事に家に帰れたんだ。

「こらサブロー!」「どこ行ってたの!心配したんだから!」

パパとママに怒られた。でも僕のことをこんなに想ってくれているのは幸せだ。

「もうパーティーの準備できてるぞ!」

「やったー!」

机の上を見ると、まだ何も乗っていない大きなお皿が2枚とコップが2つ。

あれ、パパとママと僕で3人なのになんでだろう?

「サブロー、早く服を脱ぎなさい」パパとママがそう言ってこっちを見てくる。

その時のパパとママの顔をみて思った。

ああ、お兄ちゃん達もこうして居なくなったのか。


カチャ、カチャ

俺とママはフォークとナイフを器用に使ってお皿の上に乗った肉を食べていく。

「パパ、美味しいね」

「ああママ、それにこれを食べると若返っていくようだ。部屋の飾り付けも良い感じだし、最高の気分だな」

「それにしても殺人鬼に殺されなくて良かったね」

「そうだな、大事に大事に育てた息子だもんな」

「うん」

2人ともフォークとナイフをテーブルの上に置く。


「ごちそうさまでした」

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あなたの5分間を私にください 空蟬 @utsusemi00

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