鉄棒タイム
ぼくのなまえはけんた。しょうがくにねんせいだ。いまたいいくのじゅぎょうでてつぼうをしている。ぼくはてつぼうがだいすきだ。いちねんせいのとき、くらすのなかでいちばんまえまわりがじょうずだとせんせいがほめてくれた。だからきょうにねんせいになってはじめてのたいいくのじゅぎょうでも、ぼくはとくいがおでまえまわりをしている。
「二年生になったし、逆上がりの練習しようか」
せんせいがそういった。さかあがり?はじめてきいた。せんせいのおてほんをみる。ふーん。まえまわりとはぎゃくむきにまわるだけね。かんたんじゃん。
「っ!」あれ?ぜんぜんできない。なんで。「んぐ!」あしがあがらない。
「おっ!大志、上手だぞ!」たいしくんがせんせいにほめられている。くやしい。
「っ!」ぜんりょくでじめんをけりあげる。でもだめだ。「っ!」てつぼうをにぎるてにちからをこめる。でもだめ。
「おー!佳音も上手いぞ!」かのんちゃんもできたんだ。くやしい。
「今日はここまで!」せんせいのあいずでじゅぎょうがおわった。
「ねえ、おとうさん」「ふぁ?どうした健太」いつものようにぼくにあごひげをぬかれていたおとうさんはへんなこえをだしてへんじした。ぼくはおとうさんのあごひげをぬくとおちつくのだ。「さかあがりができるようになりたい」おとうさんにそういって、よるのこうえんにつれていってもらった。よるのこうえんはしずかで、なんだかぶきみだった。てつぼうをにぎり、じめんをける。「っ!」やっぱりできない。「初めはなかなか出来ないもんだよ」でもたいしくんとかのんちゃんはできてたもん。「っ!」やっぱりだめだ。それからなんどちょうせんしてもできなかった。「ちょっと父さんトイレ行ってくるな」「うん」しーんとするこうえんのべんちにひとりですわってきゅうけいする。するとどこからかぶきみなこえがきこえてきた。「・・・トケイ」「と、とけい?」「モジバンノロクデハナクヨン」「?」なにをいっているのかわからなかったけど、てつぼうをとけいとおもえってこと?「健太!」「あ、お父さん」「続きをやろう」おとうさんはやるきまんまんだったけどぼくはできないことをつづけたくなかった。「もういいや」「こらこら、子供が簡単に諦めなさんな」「だってできないんだもん!」もういいや、ぼくにはとくいなまえまわりがあるんだもん。
「それじゃあ昨日に引き続いて逆上がりの練習するか」
きょうもたいいくだ。でもぼくはせんせいのいうことはむししてまえまわりをしていた。だってせんせいもほめてくれてたじゃん。だからまえまわりだけするんだ。
「せんせい、けんたくんがさかあがりのれんしゅうしてません」
うるさい、ぼくはまえまわりがすきなんだ。
「あれ?けんたくん」「なに?」「なんかかおにしわがふえていってるよ」「え?」まわりのこたちがぼくのかおをみてそういう。でもむしだ。ぼくのきれいなまえまわりをとめないでよ。「けんたくん、やっぱりふえてるよ」「なんかまえまわりするたびにしわがふえていってない?」「ほんとだ」まえまわりしているときにそんなこえがきこえてくる。それでもぼくはぐるぐるぐるぐるとまわりつづける。「ねえ、けんたくん!」「まえまわりばかりしているととしをとっちゃうんだよ」「さかあがりもしたらわかがえるんだよ」なにをいっているんだろ。そうかわかった。ぼくのかっこいいまえまわりをやめさせて、へたくそなさかあがりをさせたいんだな。
「こら、健太!逆上がりの練習をしなさい!」
せんせいにおこられた。しょうがない、さかあがりのれんしゅうをするか。
「はーただいま」だれもいないいえのなかにひびくぼくのこえ。
せんせいにおこられたあと、きのうのよるのこうえんのいうとおりにしてみたら、なんかいかさかあがりがせいこうした。それはうれしかったけど、みんながぼくにうそをついてまでまえまわりをとめさせようとしていたのがなんだかすごくいやだった。むしゃくしゃしながら鏡を見る。ほら皺なんて無いじゃん。やっぱりねと思うと同時に、僕はさらにむしゃくしゃしたので、いつものように顎髭を抜いて気持ちを落ち着かせた。
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