第2話
それにしても、困った事になった。
近くにあった広場に移動し、ベンチに腰掛け、かの有名な彫刻〔考える人〕のポーズをとりながら、悩んでいた。
まさか言葉が通じないとはなー
何やってんだよ、仕事しろよ、俺の〔異世界語〕のスキル!
・・・・
言葉が通じないんじゃ、宿の場所もわかんないし、何よりお金が無い。
定番だとギルドがあって、魔物討伐したり、依頼をこなしたりしてお金を稼ぐんだろうけど、ギルドの場所もわかんない。
たとえギルドの場所が分かっても、言葉が通じないんじゃ、登録も出来ないしなぁ・・・
それに、ここに移動する時に店っぽい建物の看板を見たけど、何?あのミミズが這った様なクネクネした文字。
読めねーよ。
万策尽きた~~
あれ?何だろう?目から汗が・・・
軽くこの世界に絶望してたら、鎧を身に付けた衛兵っぽい人が、数人近づいてきた。
え?何?確かに怪しいポーズはしてるかもしれないけど、ちゃんと服は着てるよ?
ジャージだけど。
衛兵は俺の前に立つと、何か語りかけてきた。
「%$#@?%&¤◈@」
はい、やっぱり解りません!
「ワターシ、イセカイゴ、ワーカリマセーン」
やれやれってポーズをしながら、言ってみたけど、通じてないよね?
衛兵たちが何か話し込んだ後、手招きされた。
??付いてこいってか?まあ、この先どうしていいかわからないので、付いていくけどね。
衛兵の後に付いてしばらく歩いて行くと、城の門前に着いた。
おお!お城だ!西洋風の城だ。
衛兵たちは、門番に話しかけ、更に中に進んで行く。
長い廊下を進んで行くと、やがて立派な門の前で立ち止まる。
すると、横に居た衛兵が、いきなり大声を出した。
何?いきなり叫んだら、ビックリするんだけど。
すると中から返事が返ってきた。
『#@%!』
あ、言葉はわかんないけど、多分「入れ!」って言った。何となくニュアンスで解った。
扉が開き中に進む。
中は大きな広間になっていて、壇上の立派な椅子には人が座ってた。
うん。殿様だ。
流石にちょんまげはしてないけど、屈強そうな面構えに髭を生やしているが、格好はまさに殿様だ。
西洋の城に殿様。
色々設定がおかしいだろう、この世界。
隣に居た衛兵がお辞儀をした。
見ると周りも皆、お辞儀してる
いいだろう。今こそお辞儀大国日本で培ったお辞儀スキルを披露する時が来たようだな!
周りにあわせて、俺もお辞儀をする。
背筋をピンと伸ばし、角度は45度!
・・・よし!決まった!
『%@#&@』
殿様が何かしゃべったら、皆お辞儀を辞めた
『@&#$%*&@¢§』
はい!殿様も何言ってるかわかりません。
格好が殿様だから、もしかしたら・・・と思ってた時期が、俺にもありました。
殿様・・じゃなかった国王様は、更に何やら話しかけてくるが、まったくわかりません。
そのうち国王と家来っぽい人が何やら話しだした。
言葉はわかんないけど、言葉の抑揚や雰囲気で、会話の内容は、何となく察しがついた。
あれだ、
『この者は、この世界に転生してきた勇者様です。広場に居る所を保護しました。』
『それは真か!めでたい!今夜はパーティーだ!国中の美女を集めろ!』
・・・とは言ってないだろうな。
真実は恐らく
『こいつ、この国の言葉が通じません』
『マジか。困ったな。とりあえず牢屋に入れておくか』
って感じだろうね。
・・・ちょっと深読みしすぎた。
流石に牢屋はないよね?
国王との会話が終わったのか、隣の衛兵に手招きされる。
広間を出て、衛兵の後に付いていきながら、先ほどとは別の道を、歩いて行く。
良かった、どうやら地下に行くわけではなさそうだ。
そこそこ長い廊下を歩いて行くと、とある部屋の前で立ち止まった。
衛兵が『ここに入れ』と言わんばかりにジェスチャーしてくる。
ベッドと小さなテーブルがあるだけの、殺風景な部屋に入り、周りを見渡す。
壁は煉瓦か石だろうか。
上のほうには、小さめの窓が付いていて、そこから光が差しているせいか、中はそこそこ明るかった。
だが窓には鉄格子が嵌められている。
うん?鉄格子?
すると背後から〈ガチャガチャ〉って音が聞こえてきた。
扉の方に振り向くと
・・・うん、扉じゃなくて鉄格子だね。
てか、ここ牢屋じゃねぇーか!!!
異世界に転生したら牢屋に入れられたんだが
異世界なんて大嫌いだーーー!
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