第六十話


 リクシアより遠く離れたとある国に魔族達が支配する場所がある。

 

 その国の名前はリーンスレイブ。

 元々はヒトが作りだした国であったが、魔族にその全てを乗っ取られてしまい、その国の人々は皆家畜のように扱われている。 

 魔族は邪神を崇拝し、魔族達がその邪神の顕現の為にあらゆる策を講じている。

 エルフ達から少しずつ魔力を奪っていたのもこの計画の為である。


 そんなリーンスレイブの王城の一室に六人の魔族があつまっていた。

 誰もが実力者で単騎で小さな町の一つ程度なら陥落させられる者達だ。


 一人は全身鎧に身を包んだ男。二メートル近い体躯に鎧もあるためか威圧感が強く、また纏っている気配も鋭い。


 一人は妖艶な黒髪の美女で背中が大きく開いた背中からは翼が生えている。スタイルもよく大抵の男は彼女に魅了されてしまうだろう。


 一人は老人。ボロボロのローブで身を纏い、片方の目には特殊な魔眼があり常にギョロギョロと動き周囲の何かを見ている。


 一人は銀髪に真っ青といっても良い程に肌の白い男。貴族のような出で立ちでずっと苛立った様子である。


 一人は白銀の鎧に身を包む騎士のような男性。その整った容姿も相まって貴公子という言葉が似合いそうな金髪の男である。


 最後の一人は獣人で獅子の顔を持ち、凄まじく鍛え上げられた肉体を持っている。


 「まずは今回集まってもらって感謝する。 少しばかり気になる事案があってな」


 「なんだよ気になる事案ってのは? 俺達を呼び出すほどの事なんだろうなぁ?」


 全身鎧に身を包んだ男の言葉に、青白い肌の男が苛立ちながら尋ねる。

 青い白い肌の男は指で机を何度も叩いており、イライラを隠し切れないでいる。


 「フォームランドを潰したリクシアの大英雄、とやらは皆知っていると思う。 どうやらその英雄がリクシアのエルフの森で魔力の吸収を行わせていたゴヴェルをも倒したようだ」


 「ゴヴェルって……あの気持ち悪いやつ? あいつって見た目のわりに結構強かったわよね? 確かレベル百は超えてたと思うけど?」


 「うむ。 少なくとも人間如きにやられる者では無かったのだが、事実殺られたようだ」


 全身鎧の男の報告に妖艶な黒髪の美女が驚きそう尋ねる。

 ここにいる者達ならばゴヴェルを殺すのは容易いが、それでも人間が倒すとは微塵も思っていなかっただけに驚きの声があがる。


 「じゃが必要な魔力量は確保できておったじゃろうて。 問題はそ奴らがここにも矛先を向けるかじゃな」


 「ロム爺の言う通りだ。 やっと邪神様の復活の目途が立ったのだ。 今は邪魔はされたくはない。 奴らの矛先がこちらに向いていなければ無用な刺激は加えるなよ。 ここにいる者達なら負けはしないだろうが、かといって甘く見ていいわけではない。 オリヴィアにはリクシアの英雄の動向を監視してほしい」


 ロム爺と呼ばれたしわがれた老人の言葉にうなずき、オリヴィアと呼ばれた妖艶な美女に指示をだす男。

 その指示に対し、短気な男は舌打ちして机を叩く。


 「生ぬりぃな。 そんな奴さっさと殺せばいいだけの話だろ?」


 「それで計画に遅れが出る、若しくは計画そのものが破綻したらどうする? 貴様には責任が取れるのか?」

 

 「はっ! そもそも負ける事がねぇからな! 計画に支障なんて出ねぇよ!」


 白銀の鎧を着た男が短気な男の言葉に釘を刺そうとするが、短気な男は意に介してもいない。

 むしろなぜそんなにも及び腰なのか理解できないという風だった。

 

 「そんなことも理解できない程にバカなのか? 生まれを誇る割には中身の伴わないバカというのは救いようがないな」


 「…………けっ。 生まれの汚い野郎が、偉そうに。 てめぇみたいな野郎に股を開きたがる女の気が知れねぇなぁ」


 売り言葉に買い言葉とでも言うべきか、一瞬にして殺気立つ二人。

 空気が張り詰め一瞬でもどちらかが動けば死闘すら始まりそうな雰囲気だ。


 「……やめておけ。 私達の目的は邪神様に顕現してもらう事。 その悲願を前にして身内で争うのは愚かな事だ」


 獣人の男性が場を納めるように言葉を放つ。

 二人は獣人の男性の言葉も最もだと思い、渋々ながら殺気を抑える。

 

 「やれやれ。 邪神様の復活が成就したならば好きなだけ争え。 それまではお互いに控えろ。 いいな?」


 全身鎧の男は疲れたように首を振り解散を告げる。

 他の面々が部屋を出ていくなか、オリヴィアだけは部屋の残り楽しそうに男に声をかける。


 「あんたも大変ね。 グラネスは絶対言う事聞かないわよ? たぶんリクシアに用事があったから言ったら偶然出会って偶然戦いになったとか言いそうね」


 「…………お前が言うと本当にありそうだから困る。 ……まぁグラネスの暴走にはほとほと手を焼いているのだ。 もし英雄とやらを殺してくれるならよし。 奴が殺されても厄介払い出来たと思うしかないな」


 「うふふふふふ悪い男。 じゃあ私はそいつらの動きを監視しつつグラネスにも気をつけておくわ」


 「頼む。 何かあればいつでも呼べ」


 「はーい」


 オリヴィアは満足したのか、そう言いながら部屋を出ていった。

 残された男は思う。

 足並みが中々揃わないメンバーではあるが、邪神さえ復活すればもうこのメンバーにも用はないと。

 それまでの辛抱だと自分に言い聞かせながら、次の段階に移った計画を遂行するために動き出す。






 会議にて苛立ちを見せていたグラネスは自分の支配する町に早々に戻り、屋敷に帰り着くと押さえていた怒りを吐き出す。


 「あの小僧……立場を分からせてやったほうがいいかもなぁ。 この俺にバカだと? ふざけやがって!」


 目の前にあるテーブルに苛立ちをぶつけ、木製のテーブルはその衝撃を受けとめきれずに爆散する。

 普通にテーブルが折れるわけではなく、その衝撃で爆散するあたり彼の膂力の凄まじさが伺える。


 「……ちっ。 俺が動くと目立つだろうし、かといってこのまま何もしないってのもつまらん。 あの小僧は邪神復活の後に粛清するとして。 ……その英雄ってのも邪魔だな」


 少し考えたあとにグラネスはその青白い顔に気味の悪い笑みを浮かべる。

 まるで新しい玩具で新しい遊び方を見つけた子供のようだ。

 

 「……レイブンを使うか。 あいつならうまい具合に英雄を始末してくれるだろう」


 自分の信頼する配下の一人を思い出し、グラネスは思う。

 もしレイブンがその英雄を始末出来たのなら、結果的に自分の功績にもなりあの連中からも一目おかれると。

 普段から小馬鹿にされがちなグラネスは今の状況にかなりの不満を感じていた。

 

 グラネスは真祖の吸血鬼であり魔族としての格は非常に高く、もちろん能力も非常に優秀だ。

 だが貴族として生まれ、何一つ不自由なく育てられた彼はとにかく横暴な性格に育ってしまった。

 感情を抑える術を知らない彼は思うままに行動する。


 レイブンという自慢の配下を英雄に差し向けるという行動がどういった結果を齎すのか……それはまだ誰にも分からない。







 ※(*´ω`)bグッ!


 リリア「アカネさん、ミソラさん。 急に呼び出してどうしたんですか?」

 ミソラ「とってもだいじなことだからおしえてほしいことがある」

 リリア「大事なことですか? 私で分かるならいいですけど」

 アカネ「ええ大事な事ですわ。 この世界に……泳ぐという習慣がないというのは本当かしら?」

 リリア「泳ぐ、ですか? 好んで泳ぐ人はあんまりいないと思いますよ。 たまに川や湖で水浴びする事はありますけど、ごく少数ですね。 場所によっては魔物もしますし」

 ミソラ「およぐときのかっこうは?」

 リリア「誰かと行くときはだいたい下着とかですけど」

 アカネ「そう……これはチャンスと思うべきか残念と思うべきか……」

 リリア「どうしたんですか急に?」

 ミソラ「りりあ様、みずぎをきよう!」

 リリア「みずぎ……?」

 アカネ「泳ぐとき専用の下着と思って構いませんわ」

 リリア「泳ぐとき専用、ですか。 あんまり使わなそうですね」

 ミソラ「ふっ……あまいですりりあ様。 これはおよぐせんようだけど、これはみせるためのものだよ」

 リリア「え!? 見せるって他の人に見られるって事ですか!?」

 アカネ「そうですわ。 水浴びをご主人様と一緒に出来たら楽しいと思いますでしょう? これはそれを可能にしつつ更に! ご主人様をその身体で悩殺するための下着……いいえ、武装と言っても過言ではありませんわ!」

 リリア「し、下着姿でゼクトさんとですか!? は、恥ずかしいような……」

 ミソラ「ふっふっふっふ。 たしかにぬののめんせきがちいさいぶんはずかしい。 しかし! そのはじらいすらもますたーのこころをゆさぶるふぁくたーとなる! しかもふつうのしたぎとちがいかわいい!」

 アカネ「ご主人様が買ってくれているものはいくつかありますし、まずはどういうものかご覧になったほうが早いですわね」

 ミソラ「りりあ様にもきてもらうからね」

 リリア「ちょっと恥ずかしいけど……気になりますね!」



 数時間後……

 


 ミソラ「ふふふふふ。 これでぜんいんのじゅんびはできた」

 アカネ「妾のビキニ姿でご主人様を悩殺してあげますわ」

 リリア「なんていうか想像してたよりずっと可愛いものでびっくりしました。 恥ずかしいですけど、なんていうか好きな人になら見て欲しいって気もしますね。 これを着て一緒に水浴びかぁ……。 た、楽しそうですね」

 ミソラ「でもりりあ様はむねもおっきいし、もうすこしせめたみずぎでもよかったとおもう」

 アカネ「そうですわね。 タンキニよりもいっそマイクロビキニでもよかったと思いますわよ? どうせ見せるのはご主人様だけですし」

 リリア「む、むむむ無理です! あれで精一杯ですよぅ! 私はミソラさんと同じ奴がよかったです」

 ミソラ「だめー。 すくみずはろりたいけいのとっけん。 りりあ様がきるのもありだけど、このあどばんてーじはわたさない」

 アカネ「うふふふふふ、水浴びが楽しみですわね」

 ミソラ「ふふふふふふ。 これでますたーをのうさつかくてい」

 リリア「ゼクトさん、喜んでくれるといいなぁ」



 三人の魅惑の肢体による誘惑にゼクトは耐えられるのか……。

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