第五十話
※本日連投分最後の更新です(*´∀`*)
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翌日。
リリアは今日も楽しい一日だといいなと考えていたが、それはどうやら叶わないようだった。
朝の講義で訓練場で教員の戦闘における必要な状況判断などを聞いている時。
血走った目をした生徒会長が講義に乱入してきたからだ。
「どこだ……どこにいるクソアマァァァァァァ!」
明らかに正気ではないその様子に誰もが驚き、そして怯える。その手には血に染まった剣が握られていたからだ。
「リーンスハイト君! いったい何をやっている!」
その様子のおかしさに教員も気付き、静止しようとした瞬間。
「近寄るなぁクソ虫がぁぁ!」
「なっ!?」
リーンスハイトはあろうことか、その刃で教員の腹を切り裂き返す刃で心臓付近に剣を突き立てる。
鮮血が飛び散り、明らかに致命傷だと分かる。
その凶行に生徒達は悲鳴を上げる。
そんな悲鳴も意に介さず、リーンスハイトは教員に剣を何度も何度も突き立てる。
「無能が! 僕の! 邪魔を! するなぁ!」
返り血を気にもせずに剣を突き立てるその姿は正しく狂っているようだった。
ほとんどの生徒が我先にと逃げるなか、リリアとエルレイアだけはその様子を見ていた。
「……エルちゃんの言う通り、やっぱり変だね」
「ああ。 様子がおかしいというか頭がいってるな」
「と、取りあえずミソラさんにお願いしないと。 み、ミソラさん! 割と緊急事態なんで出てきてもらって良いですか?」
宝石に向けてそうお願いするリリア。
傍から見ると実にシュールである。
「ん? あの人はリリアの使い魔なんだろう? 普通に呼んで出てこないのか?」
「……諸事情ありまして」
「そ、そうか……大変だな」
そんなやり取りをしていると、宝石からミソラが姿を現す。バスタオルを体に巻いているだけの状態で。
「や、リリアさま。 どーしたー?」
のんびりとした様子で出てきたが、ほぼ全裸といっても良い状態のミソラに二人は一瞬その美しい肌と色気のある姿に見惚れ、そして慌てる。
「な、なんでそんな恰好なんですか!?」
「おふろはいってた。 きんきゅうということでこのかっこう。 ……なにしてるのあれ?」
「あ、えっとごめんなさい! じ、実は生徒会長がいきなり来て先生に剣を向けていて……」
「ほほぅ。 つまりせいとかいちょうとやらをぶっ殺……まっさつすればいい?」
「言い直したけど、意味は変わってないな」
「はっはっはっは。 あのにくのかたまりにかわりつつあるせんせーをたすければいい?」
笑ってはいるがきっと止めなければ間違いなく有言実行し、ミソラは生徒会長を抹殺しているだろう。
リリアはそんな事を思いながらどうしようかと悩む。
「ゼクトさんならこういう時どうするのかな……」
「私ですか? 取りあえず手足を捥ぎ取って動けないようにしてから御話を聞きますね」
「過激すぎますよ!? ってあれ!? いつの間に帰ってきたんですか!?」
いつの間にか隣で虐殺の様子を楽しそうに見ているゼクトに驚くリリア。
そして同時にゼクトを見た瞬間に、自分が酷く安心している事に気付く。
(ああ。 やっぱり私はゼクトさんがいないとダメだなぁ)
「待ってたんですからね!」
「あぁ。 ただいま」
ぶすっとした表情を見せるリリアに笑顔で応えるゼクト。
リリアはそんなゼクトの笑顔を見て、自分もまた微笑んでいた。
少し時間は遡る。
帰ってきたよレムナント。
始めてきた時よりは明らかに人口が増えてるよなーと思いながら学園へと向かう。
エヴァン達はチサトさんと一緒に王都へと向かった。
依頼主を送り届けるとかいう名目で王都に遊びに行ったのかもしれないな。
ちょっとウキウキしてたし。
チサトさんは最後まで目を合わせなかったが斬りかかってくる事はなかったので一応関係は前進したと思っておこう。
「あ、食料買い足しておかないとな」
自分でも主婦のようだなと思いながら肉や小麦、野菜類を大量に買い込んで学園の方へと向かう。
まだ昼前なのできっとリリアも講義を受けている事だろう。
学園の入り口には基本的に警備の人間がいるのだが、俺が頻繁に出入りするせいか最近はフリーパスというか挨拶だけで通れるようになってきた。
本来なら色々と手続きをしないといけないんだけど、面倒になったのかな?
俺としてはいいけど、あとで怒られたりしないんだろうか。
「んお?」
リリアの教室に向かうか、それとも寮で待つかを考えた所で妙な空気というか、殺気のようなものを感じそちらを見る。
どうやら訓練場の方みたいだけど、殺気というには気持ち悪い程にどろどろした空気だな。
いつぞやの王都で暴れた奴よりもさらに気持ち悪い。
一応見に行くか。
「すいません、ちょっとこの荷物預かってもらえますか?」
「え? あ、はい! 了解しました!」
警備員に荷物を預け、一気に駆ける。
この体だと多少の距離もすぐに到着できるのが本当に便利だ。
扉を開けたりなども面倒なので跳躍して訓練場に侵入すると、リリア達が生徒会長と向かい合うように立っていた。
ぱっと見た感じリリア達の授業中に生徒会長っぽいのが侵入してきたように見えなくもない。
生徒会長の足元には肉の塊になっている人だったものが転がっている。
そして一番の疑問。
なぜにミソラはバスタオル一枚なのか。
俺に気付いたミソラはチラチラと太もも辺りを露出してアピールしている。
「ゼクトさんならこういう時どうするのかな」
俺なら抵抗できないように念入りに潰しますよリリアさんや。
「私ですか? 取りあえず手足を捥ぎ取って動けないようにしてから御話を聞きますね」
「過激すぎますよ!? ってあれ!? いつの間に帰ってきたんですか!?」
つい今しがたです。更に言えば食材を保存したいので早く宝石の中に戻りたい気分ではあります。
「待ってたんですからね!」
そう言いながら頬を膨らませるリリアがリスのようで実に可愛い。
頬っぺたを指でぷすっとやりたくなる。
やると怒られそうなのでやらないけど。
「あぁ。 ただいま」
取りあえずそう伝えると花が咲くような笑顔を見せるリリア。
いやもうスクショとって保存したいくらいに可愛いですな。
「お前がお前が……殺す殺す殺すコロコロコロシテやるぞぉー!」
人が折角癒されている時に癒し要素ゼロの声が聞こえてきますよー。
コンサートでこんなの来たら一発退場ですわ。
「ますたーおかえりー。 わたしののうさつぼでぃはどうかな? うふん」
「こんな状況でもぶれないなミソラ。 チラリズムの大切さを覚えたようだが、わざとらしいのはダメだぞ。 あと恥じらいが無いと興奮しないので減点」
「また……だめだった……ちらりずむのなんとむずかしいこと……」
「こんな状況でもぶれないのはゼクトさんですよ!? ゼクトさんに対して激おこじゃないですか!? 何したんですか!?」
ミソラと戯れているとリリアに突っ込まれてしまった。
いやしかし生徒会長に恨まれる理由なんてそんなに……。
王子と友達って言ってたけど、実際王子はクソな生き物だったわけだし。
セインを好きみたいだけど、そもそもセインが勝手に言っているだけで別に俺がなにがしかのアクションを起こしたわけでもない。
…………。
「いやぁ、身に覚えがないというか」
そう言ってみたが、どうやらお気に召さなかったのか生徒会長がなかなかの勢いで剣を振りかぶって突っ込んできた。
さてどうしようか。やっちゃうか?
「ますたーにけんをむけるなんていいどきょう」
ミソラが間に割って入り、近くにおちていた生徒の杖のようなもので横合いから思いっきり殴り飛ばした。
正直、今のは痛いと思う。
警戒していないところに横から脇腹に杖がぶち込まれたのだ。一瞬めり込んでいるのが確かに見えた。
生徒会長は面白いように吹き飛んでいった。
「ふふん。 あ、ちがった。 いやーんみえちゃう、はずかしー」
「わざとらしいので更に減点な」
「くぅ……てごわい」
「……なんていうか、台無しですね色々と」
まったくだ。恥じらいがあってこそ最高のエロスだというのに。
そこはミソラの課題だな。無理矢理エロスを引き出そうとしてもこいつ喜びそうなんだよなぁ。
「ぬがぁぁぁぁぁ! バカにしやがってバカにしやがってバカにしやがってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
おぉ、アレを受けて生きてるのか。
やるな生徒会長。立ち上がる根性も流石だ!
「しまった……てかげんがすぎたかな?」
まぁ上半身残ってるしな。
手加減なしなら上半身吹き飛んでるだろうか。
あ、殴ったところの服が破れて下の皮膚が見えてるけどすごい内出血だ。痛そう。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネシネシね死ネシネしネシネぇぇぇぇ!」
胸元の宝石を毟るように取り出した。
使い魔さんか。あんなのの同業者は一体どんな奴だろうか。
ちょっとワクワクしながら待っていると現れたのは犬だった。
まぁ犬というにはかなりでかい。大型トラックくらいのサイズはあるな。
全身が真っ赤な毛皮に覆われているのが特徴的だな。
あと涎が多い。 無駄に多い。ちょと臭そう。
毛も堅そうだからモフモフしても触り心地は悪そうだな。
「……チェンジで」
『グゥオオオオオオオオオ!』
意味は分からなかったと思うが何やらこのワンコも激おこだ。
いや、やっぱりチェンジの意味が分かったのか?
だとしたらすまんな。犬は好きだが、可愛い系の方がいいんだ。
「ますたーますたー。 あぁいういぬこすぷれはよき?」
「却下だな」
そんな他愛ない会話をしていると激おこわんちゃんが炎を口から吐き出した。
炎だから良いけどこれ映像変えて吐物に変えたら相当汚いよな。
「取りあえず邪魔」
殺しても使い魔なら宝石に戻るのでわんちゃんでも容赦なく殺れるな。
リリアを護るのはミソラに任せ、炎をかいくぐって一瞬で側面に回り込む。
自分の攻撃で視界を塞ぎすぎるのも問題だぞわんちゃん。
抜刀し、一瞬にして首を落とす。
毛皮が中々に斬りにくい感じだったが強引に断ち切ってみた。
六紋刀がしょぼい刀とはいえ、この斬りにくさは斬撃に耐性でもあったのだろうか。
あ、フレの造ってくれた刀にしょぼいとか言っちゃった。
ごめんよ。
盛大に血を吹き出しながら地面に倒れ伏すわんこ。
少しすると光の粒子となって宝石の中へ戻っていった。
このまま生徒会長に悔しい感じの台詞を吐かせるのも鬱陶しいので、そのまま生徒会長に向かう。
まるで薬でもやっているんじゃないかと思うほどに正気を失っている彼だが痛い目を見れば少しは正気に戻るかな?
ふと上からこちらに向かって攻撃を仕掛けてきている奴がいる事に気付く。
俺が生徒会長を攻撃しようとしているのを止めるつもりなのだろうか。
とても遅いので先に生徒会長の四肢を綺麗に斬り落とし、騒ぐ前に首を掴んでそのまま襲撃者の攻撃を受け止める。
「そこまでにしてもらおうか! って格好良くその坊やを助けるつもりだったんだけどなぁ」
「随分ゆっくりとされていたんで先に片付けさせていただきました。 ところでどちら様ですか?」
「あそこの英雄さんとアンタを殺してくれって頼まれてな。 いやぁ、あっちの英雄さんには常に結界みたいなのがあるから下手に手は出せねぇしあんたもいないからどうしようかと悩んでそこの玩具で隙を作れないか待ってみたが……無理みたいだな」
男は素早く後退し、へらへらと語っている。
うむぅ……隙だらけなんで切り刻んでいいかな。
「おっと切り刻むのは勘弁してほしいな」
「あ? ……心を読めるのか?」
「すげぇなあんた。 いきなりその答えにたどり着くなんて」
「漫画なんかではよくあるからな。 対処法もな」
というか心を読むなんて最高に面白そうじゃないか。
反応出来ないレベルで切り刻んでやるからぜひとも対処してくれよ。
「そ、れは! ちょっと待てっつおっ!」
おぉ、振るう刀に対してしっかりと避けて、避けきれない分は剣でガードしおった。
こっちに来て始めての経験だな。
「ちっ……!? 心を読めてもこんなに対処できないのは始めてだぜあんた!? なら……こうだ!」
何か魔法を発動したようだが、男に変化はない。
なんだろうかと思っていると変化は手元にあった。
首根っこを掴んだままだった生徒会長がボコボコと体組織が変性を始めている。
「これは……獣魔薬か? 全部潰したと思っていたが」
邪魔くさいので男に向けて生徒会長を放り投げると、流石に心を読んでいるだけあって避けられてしまった。
「あんた結構人でなしだな。 いちおうこいつの事知ってるんだろう? 容赦なく投げるなんてな」
「知り合いと友人は違いますよ。 友人なら助けもしますが、ただの知り合いなら死のうがどうしようが特に興味はありませんので。 ……あ、でもあなたのような男には興味がありますね。 大物ぶっているやつを叩き潰すとどんな風に鳴くのか興味がありますので」
「……心の底から思ってやがるな。 あんたみたいなヤバイ奴は始めてだよ」
「いやぁ久しぶりにそんな事言われ……あ、いやそうでもないか。 結構言われる」
そんなやり取りをしていると生徒会長さんがとてもとてもキモイ姿に大変身していた。
どうしようぶっ殺していいかな。
王子やあのグレゴリーとはまた違った変異だな。
これは……鬼?
全身真っ青な肌に筋骨隆々な姿は以前の生徒会長の姿を全く残していない。
額から一本の角が姿を見せている。
「へー、こいつ鬼っていうのか? あんた博識なんだな」
「まぁ似ているだけかもしれませんけどね。 本物の鬼の姫ならリリア様の宝石の中に一人いますよ?」
お父さんとしてはもっとお姫様らしくしてほしい所ですけどね。
ミソラも含めてちょっと自由すぎる気もする。まったく誰に似たのか。
「あんたに似たんだろうさ。 いけよ坊や! お前の憎い憎い男だろう?」
『アァァァァァァァ!』
やっぱり意識はなさそうだな。
回復かけても元に戻るわけでもないし……死んでもらうか。
ついでにお前も。
「っ!?」
「俺が意識して斬るのは防げるみたいだけど、スキルの場合はどうだろうな」
「坊や! 早く殺せ!」
元生徒会長の背後に回りそう命令を出す男。
ふふん。それでそいつを盾にしたつもりか?
「肆の太刀 紫電」
パチンという空気の爆ぜる独特な音が鳴り、音速を超える雷の刃が一瞬にして元生徒会長と男を貫く。
貫通性の高い技で直線状の敵を一息に殺せる使い勝手のいい技だが……決まると気持ちいいもんだな。
二人とも腹にでかい穴をあけて倒れこむ。
「うふふふふ。 相変わらず容赦ないのねゼクトさん」
「いやぁ、むしろ一撃で殺してやっただけ優しいと思うけどな。 というか途中から見てたみたいだけど、知ってる男か?」
「いえ、全然知りません。 ただ生徒会長が少しだけ不憫だな、と」
まぁ一応自分に好意を向けてた相手だしな。多少の情もあるのかな?
そう思うと容赦なくやっちゃった俺って結構悪い人だろうか。
『ゥゥゥゥゥゥ……』
「まだ息があるのね。 ……最後だしせめてもの手向けよ。 私の手で殺してあげる」
鬼と化している生徒会長の目をそっと優しく手で隠し、まるで子供をあやすように優しく撫でたあと。
一瞬にして首を刎ねた。実に見事な一撃だと思う。
愛する女の手で逝けたのは良かったと思うべきかな?
「ぐぬぅぅぅ……ま、さか……俺の力があっても……敵わないとは……攻撃を、避けるくらいは出来ると。 思っていたんだが……ごほっ」
「はっはっは。 相手が悪かったですね。 ところで一体誰の命令でこちらを殺しに来たのか教えていただいても? あなたの動きを見る限りかなりの手練れのようでしたし、そんなあなたを雇うには相当な金がいるでしょう? となるとそこそこの大物だと思うんですが」
「ぐふっ! ……くははは、教えるものかよ。 俺を殺した事を後悔……して……次に襲撃される……恐怖を……味わえ」
「おや? こちらの情報を正しく聞いていないようですね。 あっちを見てみなさい」
「あっ? なっ!?」
どうやらこちらが死者蘇生というか復活が出来る事を知らないようだな。
示したその先には肉塊になっていた教員が五体満足で生き返っている。
……あいつなんでまだバスタオルのままなんだ?
「……まぁいいや。 さて、貴方に選択させてあげましょう。 このまま誰が指示したかを話して楽に死ぬか。 それとも何度も死ぬような、というより殺されて死んでを繰り返したあとに話すか。 私としては前者をお勧めしますよ。 うちの拷問担当の鬼姫やあっちのバスタオルの子は私より過激ですからね」
いや本当にだいぶ過激だから、マジで今話したほうがいいと思うぞ。
「くっ……フォームランド……国王……さ。 あんた達が怖いんだろう……な」
ほほぅ。名前はちょくちょく聞いていたし、いずれ対処しようと思っていたがとうとう直接こっちに手を出してきたか。
…………いい機会だ。潰すか。
「名前は」
「……ぁあ? リーグ……だ。 一応フォームランドでは強い……ほうだぜ?」
「強さはどうでいいです。 今からあなたを治療します。 その後フォームランドに戻ってください。 その時に手紙を持たせますので。 拒否は許しません。 断るならあなたを殺して自分で届けるだけですので。 心が読めるなら私が本気で言っているのはわかりますね?」
「あ……あぁ……」
よしよし。
折角だし楽しく派手に潰してやろうじゃないか。
いやぁ……楽しみだ。
人のご主人様に手を出すとどうなるか……教えてやろう。
※今日はここまでーヽ(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ノ
自分が参加してたドラゴンノベルズさんの期間が今日までって完全に忘れてました(つд⊂)w
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