第四十話

 ※今日はめっちゃ連続更新予定ですぜヽ(=゚ω゚)人(゚ω゚=)ノ

 でも仕事なんで感想とか見るのは遅いっす(つд⊂)



 夕方の冒険者ギルドには数多くの冒険者が集まってきている。普通はどんどん集まってくるのなら収集係が必要になってくるが、それを一つのチームが一手に担っている。


 以前顔を見た、恐らくワイバーン討伐に向かったチームの頭であろう人が冒険者たちを束ねている。

 実力に関してはあまり知らないが、あれだけの数の冒険者たちの対応がこなせるという事は事務関係の仕事についてや現状把握について、さらには他の冒険者達からの信頼もありまとめ役を行っているのだろう。


 ちなみにギルマスのハゲは既に町の駐屯兵、および魔法学院上層部との会議に出席している。

 

 二度手間になるから本当ならそっちに行きたかったのだが、誰も場所を知らなかったので俺とリリアはこうしてギルドで待機中の身である。

 


 「しかしコボルトの大群っつても所詮コボルトだろう? この町の戦力なら余裕じゃね?」

 「最近強くなってきてからって驕るんじゃねぇ。 例え一匹で弱かろうと、何百何千という数で一度に襲われてみろ。 一瞬で死ぬぞ」


 

 腑抜けたような様子の戦士の姿をした若い男に神官服の男がたしなめるように諭す。

 実際ここらにいる奴の平均レベルを考えると一対四でも結構絶望的になるんじゃなかろうか。

 どの程度の参戦者がいるのかは分からないが、この町の規模も考えると駐屯している兵士達で約三千。さらに学園の使える奴等も含めてせいぜい百程度か。

 さらにギルドの人間たちも考えると総勢約三千二百くらいか。 かなり希望的な観測も含めてだ。


 一点集中の攻め方をしてくるようならば護るのは非常に容易い。

 俺達が力を貸すからだ。

 しかし、敵の攻勢が分散して包囲作戦が出来る程の数である場合はちっと厄介だ。

 


 「…………犬畜生の頭の出来を褒めるべきか」


 「犬畜生って。 ゼクトさん犬が好きなのでは?」


 「ん? あぁ……言う事を聞いてくれるなら大好きですけど、会話をする気もなくいきなり襲いかかってくるならそんな畜生に愛情なんぞ湧きません。 死ねばいい」


 「し、辛辣ですねぇ。 ……数が多いみたいですし、私も頑張らないと」


 意気込むリリアを見て、そういえば準備していたものがあった事を思い出す。

 リリアには間違いなく嫌がりそうだが、町が襲われるのであれば四の五の文句を言っている暇はないからな。


 「リリア様。 実はこんな事もあろうかと素晴らしい杖をご用意しておきました。 きっとお気に召しますよ」


 「ふぇ!? 杖ってお高いんですよ! い、良いんですか!?」


 「実はゴードから冒険者機能を消した貯蓄管理のためだけのカードを作ってもらったので、金銭面に関しても今後はバッチリとフォローさせていただきましょう」


 そう。ゴードから冒険者の使うカードの金銭面のみのバージョンのカードを作ってもらっていた。

 そこまで手はかからないそうなのですぐに手に入れる事が出来たのは助かった。

 これでいちいちリリアの財布からこっそり拝借しなくてすむぜ。



 おっと話が逸れたな。

 リリアのために用意したある意味規格外の杖。そのレベルに相応しい武器である。使い勝手は少し練習が必要だが、慣れると実に使いやすい武器だ。もしこの武器のデメリットをあげるなら見た目くらいだろうか。



 「こちらです、リリア様!」


 冒険者ギルドの片隅で唐突に茶番劇を始めた俺達。

 知らない奴らは物珍しそうにこちらを見ており、知っている奴等はまた何かおかしな事をやり始めたと逃げる態勢をしっかりと作ってからこちらに聞き耳を立てている。


 掛け声と共に姿を見せたのは銀色に輝くこん棒。従来のこん棒よりもはるかに軽く、鉄製のような質感があり冷たい硬質な印象を受ける。持ち手の部分には黒い布が巻かれている。


 「リリア様……。 これが私が持つ最高(に面白い)の杖です。 その名を『キンゾ・クバット」と申します」


 「なんかちょっと怖い雰囲気の武器ですね。 キンゾ・クバット……いったいどんな武器なんでしょうか」


 「これは杖術を納めていなくても使用できる武器ですが。 まず最初に、この武器では魔法攻撃自体はそれほど増強されません。 せいぜいが一、八~二倍程度です。 ですが……」



 「ちょちょちょっと待って! 二倍程度って……! それだけでも十分に国宝クラスですよ! それをせいぜい!?」


 唐突に話の腰を思いっきり圧し折ってくれたお姉さん。君は誰だ?

 正直話の進行を止めるのが面倒なので無視するが。


 「はい、外野は無視しますよー。 知りたい事はまた後で。 まぁそれで本当の力は殴打力とその付加効果にあります。 リリア様、これを持ってみてください」



 「ふわぁ。 ……スゴク、硬くて、おっきぃです……」


 「グッジョブ! ……ゴホンッ、失礼しました。 それで敵を殴打すると筋力に応じたボーナスが付き、殴打力が上がります。 さらに約四割の確率で敵を気絶させます」


 「そ、そうなんですか? じゃあゼクトさんが叩くとどんな感じになるんですか?」


 「お手本にはなりませんが、そうですね。 例えば、あっちで座ってるフルプレートの男性の上半身が一撃で肉と臓物になる程度の威力にはなりますよ」


 「……ぜ、前線に出るまで封印ですね! そうしましょう! それがいいです!?」


 リリアは広げたバットを背負いこむと一目散にギルドの出口を目指す。

 周囲からの視線が相当に恥ずかしかったのかもしれない。

 こういう世界だからばれないけど、今時のJKに金属バットで犬殺してこいとかどう考えても鬼畜だよね。

 あ、違う違う。 キンゾ・クバットだった。


 ていうかリリアさんや、一応待機してるんだから勝手に出ていったらいかんですよ?

 逃げようとしたリリアを後ろから捕まえて、お姫様抱っこの要領で持ち上げ逃げれないように固定しておく。

 暴れるかと思ったが意外と素直に捕まってくれた。


 「ぜ、ゼクトさん。 この抱っこはちょっと……恥ずかしいですぅ」


 「おや、それは大変ですね。 ではもう少し楽しみましょうか」


 「相変わらずひどいですよ!?」


 「そんな事はないですよ」


 羞恥で顔を染めるリリアも可愛いのだが、あんまり苛めると後が大変なので取りあえず下しておく。

 こちらのやり取りを楽しそうに見ているものが多いが、中にはキンゾ・クバットに興味を示したものが多いな。

 まぁリリアのような小動物みたいな可愛らしさの女性が国宝級の武器持ってたら奪いたくなるだろうな。


 こちらの正体を知っている奴らは絶対にこちらに喧嘩は売れんだろうけど。



 「皆、待たせてしまったな。 今回呼び出した理由は既に聞いているだろう。 各メンバーの代表達はすぐに上の会議室に来てくれ。 そこで詳細を伝える」



 お、ようやくギルマスが帰ってきたか。

 こちらにはまだ気付いていないようだけど、まぁいいか。

 そのまま便乗しよう。


 上の階に向かったのは俺達を抜いて八名。

 つまりリーダー格である人物が八人もいるという事か。

 下の階には百人近くはいたから結構パーティで組んでいる所が多いんだな。


 ぞろぞろと上の階に向かい、会議室に入ったところでギルマスが大きなため息をつき椅子に座る。

 全員の顔を見渡し、最後に俺達と目が合った。

 目が合った瞬間に硬直している所を見ると、受付からは俺達が来ている事は聞いていなかったみたいだな。


 しばらく硬直したあと、ギルマスは机を叩きながら立ち上がりこちらに指を指して口を開く。



 「リリア嬢! それにゼクト殿! 探していたというのになぜここにいる! 作戦会議に出席してもらう為に何人か奔走していたというのに!」


 「あっはっはっは。 まぁ悲しいすれ違いですね。 それよりまずは作戦をお聞かせください」


 「ぬぅっ。 今は仕方ない。 だが後で話がある」


 ギルマスは興奮した吐息をゆっくりと整え、再度椅子にどかっと座り込む。その所作には最低限の気品が込められている。

 普段はそういう品のないことをしない人だろうから相当に疲れているのだろうと分かる。


 「ふうっ……。 さて、耳ざとい連中は知っているだろうが、コボルトの大群が町の東方から近づいてきている。 数はおおよそ五千といった所らしい。 普段から間引いてもらっていたと思っていたが、まさかこれほどの数が潜んでいたとはな。 我々冒険者ギルドは魔物の脅威から町を護るために駐屯兵たちと協力してこれの撃退にあたる。 今回の我々の役割は遊撃だ」


 ギルマスは町とその周辺の地図を取り出し、ゴブリンにあたるであろう赤い駒を町の東方にあたる部分に置いた。

 

 「駐屯兵と学園の生徒には徹底して防衛に徹してもらう。 そこで受け止めた魔物たちを私達冒険者が両翼から挟み込んで潰していく方法をとる。 敵の数が多すぎるので受け止めるのも大変な負担ではあるが……」


 「既に王都に救援要請は送ってありますか?」


 「ああ。 それは既に行っている。 緊急用通信装置を使ってすでに事情は伝えてある。 だが準備や行軍距離を考えると先遣隊の到着が早くて三日。 コボルトの到着は約二日といった所だ。 難しい戦いにはなるだろう」



 どこかのリーダーさんの質問に答えるギルマス。

 コボルトの到着の方が速いのか。

 しかもこれは敵が分散せずに突っ込んできた場合の戦いかただ。

 他の場所を攻められたら脆い。

 かといって散らばった時に対応しようとして、守りを薄くしてしまうとそこを突破される可能性もあるか。

 こちらから攻めていった場合はどうか。


 二日で到着する程度の距離にいるのであれば、こちらから出向いた場合一日もあれば会敵するだろう。

 そうなると問題は戦闘準備が整っていない可能性があることだ。

 その辺りは流石に軍関係者が知恵を出すだろうけど。


 うーむ。やはりここまで近づかれていると罠を準備して迎え撃つのが戦いやすそうな気がするな。



 「リリア嬢、ゼクト殿。 貴殿らは今回どういった立ち回りをされるのだろうか?」


 「え、えぇぇと……! ぜ、ゼクトさん! どうしましょう!?」


 「落ち着いてくださいリリア様。 ……ギルドマスターが言う策に賛成です。 敵が分散して攻めてきた時の事も考えてアカネとリリア様を他の場所を攻められたときの対処として配置し、ミソラを皆さんの後方に回して回復に専念させましょう」


 「アカネ殿にはお会いした事はないが、たった二人で敵を食い止められるのか? それにゼクト殿はどうするつもりだ?」


 「リリア様もアカネも非常に強くなっていますので問題ないでしょう。 私は敵の首魁を一気に潰しにいこうかと思います。 たかがコボルト風情がこれだけの数で攻めてくるなど、普通ではありえない事でしょう? まず間違いなく統率している頭がいるでしょうから理由を知りたいですし」


 「……まさか一人であの大群を越えて首魁に近づくつもりなのか?」


 「そのつもりです」


 呆れたような表情のギルマスさんに他の冒険者たちも頭おかしいんじゃないかという様な表情でこちらを見てくる。

 確かにクレイジーな発想だとは思う。でも正直コボルト風情の攻撃だとこちらには多分一ダメージも通らないだろうから問題ない。

 

 ……それよりもうちのリリア様はさっきからぼーっとして話を聞いていないようにしか見えないんだが。

 まさか考える事を放棄して俺に全てをぶん投げているのだろうか。

 

 「……普通ならば何をバカな事を言っていると怒る所だが……。 ゼクト殿なら難なくやり遂げるのだろうな。 では敵の首魁を打ち取ってくれ」


 「了解しました。 ……リリア様、しっかりしてください」


 「ふぅあっ!? あ……すいません。 いきなりの事に考える事をやめてました!」


 それを宣言するのはさすがにドン引きしますぞリリアさんや。

 

 「リリア様がぼーっとしてるので勝手に役割は決まりましたよ。 アカネと一緒に各所の守護です」


 「アカネさんと一緒なら安心ですね」


 「ん? いえ、アカネは西側と南側の守護でリリア様は一人で北側の守護ですよ。 もちろん防具などもこちらで用意しておきますので。 頑張ってくださいねリリア様」


 「…………一人? 私がですか? え? ……冗談ですよね?」


 「何を言っているんですかリリア様。 レベル六十八で最高の防具もつけて、さらに最高(面白い)の武器まであるんです。 例え一人でも負ける要素なんてないんですから頑張ってください。 ほら行きますよ」


 「嫌ぁぁぁぁぁぁ! 私も冒険者の皆さんと一緒で良いですぅぅぅぅぅ!」


 リリアの首元を捕まえて逃げれないようにしつつ部屋から出る。

 そんなリリアに会議室の誰もが憐れみの視線を送っていた。


 


 その夜。 

 レムナントの学園の寮では遅くまでリリアの悲鳴が響いていた。







 ※小話だよー(*´ノ∀`*)


 ルリア「ただいまアリアお姉ちゃん!」

 アリア「あらお帰り。 今日も元気一杯ね」

 ルリア「うん! あのね、お姉ちゃんに聞きたいんだけど聞いてもいいかな?」

 アリア「うん? どうしたの?」

 ルリア「どうやったらゼクトお兄ちゃんと子供が作れるのかな?」

 アリア「…………いきなりどうしたのかしら?」

 ルリア「えっとね。 友達のアンナちゃんが言ってたの。 子供は好きな男の人と作るんだって。 私が好きな男の人って考えたらゼクトお兄ちゃんかなと思って」

 アリア「……そう。 そうねぇ。 私としては実践を見せながら教育するのも良いとは思うのよね。 じゃあ、次にゼクトさんが来た時に一緒に教えてもらいましょうか」

 ルリア「わぁ! 楽しみだねアリアお姉ちゃん! あ、それならリリアお姉ちゃんも一緒に教えてもらえばいいんじゃないかな!」

 アリア「うふふふふ。 そうね。 既にできてるかもしれないけど、一緒にっていうのは楽しそうね」

 ルリア「楽しみだなぁ! リリアお姉ちゃんとゼクトお兄ちゃん早く帰ってこないかなぁ!」

 アリア「そうね。 うふふふふふふふふふふふふ」



 



 ゼクト「……!?」

 リリア「どうしたんですかゼクトさん? スゴク気持ち悪い動きでしたよ」

 ゼクト「いや、なんというか凄まじい悪寒が背中に走ったというか」

 リリア「え? 風邪ですか? 休んだほうがいいですよ。 私がつきっきりで看病しますから」

 ゼクト「あぁ、いや大丈夫。 気のせいだから。 うん、たぶん気のせい」




 ゼクトが頭を抱えながら性教育を語る日はそう遠くない……。

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