第三十話

 ※星?の評価ありがとうございますー(n‘∀‘)η!

 究極凡人さんレビューもありがとうございます(*´∀`*)! 書籍化目指して頑張ってるけど、書籍化決まってるとかそんな事はないからねー(つд⊂)!

 決まったら超嬉しいけどねー(*゚∀゚)!







 王女フィオナの王位継承が確定した事と、リリアがフィオナの守護騎士として任命された事によって盛り上がりを見せている王都。

 その発表から一か月近くたった今もなお、その興奮冷めやらずといった様子の王都ではその噂を聞きつけて物見遊山で訪れる人も増えていた。


 そんな人口の増加に狙いをつけた商売人も多く、これを機にと新しく商売を始めた者達もいる。

 

 もともと娯楽というものがすくないこの世界において、人々は様々な刺激に飢えている。

 そんな彼等が目新しいものに視線が向くのは仕方のない事だともいえる。

 大した事のないものであれば、すぐに廃れていくのが世の常だ。

 ではその流行に乗る事が出来たものはどうか。



 


 「らっしゃっせぇ! 何人の予定だぁ!?」


 「ひっ!? ……え、えと二人です!」


 「お客さん二名をご案内だぁ! メニューは少ないが美味いぞ! こころして選べや!」


 「はっ、はぃぃ!」


 およそ接客と思えない言葉遣いと見た目の店員が二人の男女を客席へと案内する。

 その様はエスコートという言葉とは無縁に見える歩き方で、見た目もどう見ても暴力を生業とするほうが得意そうだ。

 筋骨隆々で禿頭の男性のワイルドな笑みは客を慄かせていた。


 店選びを失敗したかと思った二人の客は、早く食べ終わってここを出ようと思いメニュー表に目を向ける。

 非常にシンプルに書かれているそれは、どれも安価という程ではないが高すぎるわけでもない。

 肉料理が中心に多くあるため、二人は書いてあるそのままにステーキランチを注文した。

 なんの肉か書いていないところに二人は少し不安を感じる。



 「ステーキランチだな! 了解したぜぇ! ステーキランチ二人前だおらぁ! さっさと作りやがれ!」


 注文を受けた店員の男は、本人としてはにこやかなつもりの笑顔で対応し厨房に向けて声を上げる。

 二人はおっかなびっくりといった様子だが、ふと周りに目を向けるとくすくすと楽しそうに笑っている客が多い。

 もしかしてこういうのがこの店のスタイルなのだろうかと二人は疑問に思う。


 注文してすぐから肉が焼かれ脂のはねるような音と美味しそうな香りが厨房の方から漂ってきた。

 

 「ね、ねぇ? すごくいい匂いじゃない?」


 「そうだね。 入ったときはどうかと思ったけど、いい店なのかも」


 漂ってくる匂いに反応した女性は、料理が期待以上なものが出てきそうだと喜び頬を緩ませている。

 男性も女性に嫌な思いをさせずに済んだと喜んでいた。

 

 他愛ない雑談をする事十分ほど。

 まだ熱をもった鉄板に焼かれ続けている肉を乗せて店員が二人に近づいてきた。

 先ほどとは違う男性で、濃紺の髪を後ろで結いあげた男性だ。先ほどの禿頭の男性よりも華奢だが、目つきは鋭い。冷たいとも思わせるような雰囲気の男性がスマートな所作でテーブルに料理を並べ、頭を下げてさっていく。


 「……男の僕が言うのもなんだけど……すごく格好いい人だな」


 「……本当、すごくスマートで格好良いわね」


 「……そんなに熱が籠った言い方されると複雑……」


 「ま、まぁまぁ。 熱いうちに頂きましょう!」


 女性は誤魔化すように用意されたフォークで肉に切れ込みを入れる。

 表面が程よく焼かれたその肉はフォークを差し込むと、少ない抵抗のあとにするりと切れた。

 それだけでも柔らかいのだと感じられる肉の仕上がりに驚く。熱い鉄板の上でいまだ音を立てて焼けているため音と匂いの両方でまず楽しむ事ができる素晴らしいアイディアだ。


 切ったその肉を一切れ口に含み、二人は衝撃を受ける。

 鼻腔を抜ける香ばしい香りと、舌の上でまるで蕩けるような柔らかさ。噛むと肉汁と共に溢れえる旨味が口の中に広がり恐ろしいまでの幸福感を突き付けてくる。

 肉の味を決して損なわない厳選された調味料は肉の味を二段階も三段階も引き上げ、一種の芸術のようだ。

 

 二人はお互いに視線を交わし、無言で食事を勧めていく。


 肉料理という事で脂による胃もたれなども心配だったが、一緒に用意されていたパンやスープがそれを見事に緩和し、それどころか肉と一緒に食べたり、肉の後に味わう事でさらに美味しく感じるという計算がなされたその料理達。


 気づけば皿の上に何も残っていなかった。


 「……信じられないくらい……美味しかった」


 「……格好いい店員さんに超美味しい料理……。 これは流行るよ。 流行らないはずがない」


 二人は茫然とした表情になり、過去に同じような経験をしたほかの客達にまたもクスクスと笑われている。

 自分達もきっと同じような過程を辿ったのだろう。


 二人はふらふらと立ち上がりながら、会計を行い思い出す。

 

 「……最初値段は普通とか思ってたけど……この値段でこの味ならむしろ安すぎる気が……」


 「そうよね。 もとが取れるとは思わないけど。 でも決めた。 私絶対ここに通うわ」


 「彼氏としては止めたいけど……気持ちはすごくわかる」


 二人の客が満足し、新たなリピーターを得た店員達はそれを見て厨房の奥で悪い笑みを浮かべる。

 その様子は人相も相まって悪事をして喜んでいる悪人そのものである。



 こうして王都に新しくできた食事所『銀のサルヴァトーレ』は順調な滑り出しから、一気に口コミとその実力によって客足を拡大させていった……。











 その夜、王城のとある一室。

 客人用の部屋を一部改装された華美になりすぎない程度に装飾された部屋のベッドでリリアは寝転がっていた。

 普段は簡素なシャツとスカートに少し見栄えのいい外套を羽織っている事の多いリリア。

 今は就寝前という事もあるが、いつもよりも大胆なネグリジェ姿で横になっている。

 

 それを眼福と思いながらも表情に出さないようにする俺。

 ポーカーフェイスに自信はあるぜ。


 「……うぅぅぅ……疲れました」


 「はっはっは。 でも今日までよく頑張ったなリリア」


 「何というか色々とあっという間に勝手に話が進んでいってて……。 何が何やらです」


 寝転がるリリアの頭を撫でながらリリアの頑張りを思い出す。

 あの発表からリリアの人気はずば抜けてすごい事になっていた。

 所謂時の人というのはこういうのだろうと思ったものだ。

 リリアでアレなのだから元の世界の有名人は、正直普通の生活とか出来ないんじゃなかろうかと思ってしまった。


 守護騎士に任命されたため学園の方は行かなくても良いという話だったが、フィオナの即位自体もまだ先の話なので取りあえずはまだ学生として過ごす事になった。

 おそらく学園を卒業したら女王直属の守護騎士となり、ヴィスコール領を盛り上げていく事になるだろう。


 「まぁ明日からはまた学園に戻るからゆっくりできるさ」


 「そうだといいですけど。 ……正直、人と話すのが苦手なので色々話しかけられないか心配なんですよね」


 「俺も苦手だけどな」


 「いや、それは嘘ですよね!? 笑顔でいろんな人と悪巧みしてるじゃないですか!?」


 悪巧みとは失礼な。楽しい事は企画してるけど、決して自分から悪い事はしていない……はず。

 

 「悪巧みとは失礼な。 ……ん?」


 リリアの方を見ると、何やらジーっとこちらを見つめてきている。

 どうも居心地が悪い視線だ。いや無視しようと思えば全然無視できるのだけども。


 「……ゼクトさん。 ……この前、またセインさんに血を吸われたんですよね?」


 「ん? あぁ吸われたけど?」


 「セインさんが先に学園に戻る時に少し話したんですけど……。 熱い夜を過ごしたってなんですか?」


 熱い夜? 大した事はなにもなかったと思うけど……。

 確かその日は呼び出されて血が欲しいとか言われてそのまま吸われてたら、暴走して襲い掛かってきた(性的に)から一撃入れて朝まで眠らせていたと思う。 ……うん、何もないな。


 「特に何もなかったと思う。 強いて言うならアレか? 首に一撃入れたからそこが熱く感じたとか?」


 「え!? むしろ何してたんだですか!? 首に一撃!?」


 「いや鬱陶しくてつい……」


 「……はぁ。 何も無かったなら良いんですけど……。 ……いえ、やっぱりよくありません! ゼクトさん!」


 勢いよく起き上がり、こちらを睨みつけるリリア。

 酒でも飲んだだろうかと思うほどに顔が赤い。


 「今日は私と一緒に寝てください! ご、ご主人様の命令です!」


 顔を真っ赤にしたまま指をつきつけてきたリリア。

 プルプルしてるのが実に可愛らしい。

 

 ……しかし……。うーむ、この一緒に寝てくださいはどう捉えていいのか。

 手を出しても良いですよとかいう意味なのだろうか?

 出しても良いというなら喜んで手を出すのだけど。

 普段の態度だったり、キスしてきたりと好感度的には問題ないと思う……のだけど。


 「……まぁいいけど。 じゃあ寝ようか」


 「うぇ!? い、いいいいいい良いんですか!?」


 「なんだ恥ずかしいのか?」


 「そ。そそ、そんなななな事はありましぇんでしゅよ!? さぁ寝ましょう!?」


 「そんなに慌てなくてもいいのに」


 噛み噛みなリリアがおかしくてついつい笑ってしまった。

 自分も執事服を脱いでパンツ一丁になる。寝るときはだいたいこの格好だ。


 「わ、わわわわわ……! ぜ、ゼクトさんの体初めて見ました……!」


 「そんな手で顔を隠して指の隙間から見るとかベタな……」


 リリアの横に入り込み、横になるとリリアも照れ臭そうに枕に頭をぼふっと乗せた。

 耳まで真っ赤になっていて実に可愛らしい。

 さらさらと流れる髪がきれいでついつい手を伸ばしてしまう。


 「リリアも、その家族もみんな綺麗な髪してるよな。 サラサラだ」


 「うぅぅ……そ、そうですか? あ、でも何だか撫でられてると気持ちいいです」


 「……そうか」


 撫でているとだんだん落ち着いてリラックスしてきたのか、リリアの瞼がどんどんと落ちてきた。

 これはこれで面白い。

 一撫でするたびにゆっくりと落ちる瞼。

 ここのところ相当忙しかったからその疲れもあるのかもしれないな。

 瞼を開けて起きようと抵抗しているが、眠気が勝ちそうである。


 「ゆっくり寝ていいんだよリリア。 おやすみ」


 「……じゃあ……おやすみのキス……してください……」


 普段よりも甘えん坊なリリアがおかしくて可愛らしくて。

 ゆっくりと唇を重ね、満足した表情のリリアはそのままストンと眠りに落ちていった。


 「……本当に面白い奴だな。 ……ゆっくりお休み」


 幸せそうな寝顔を見ながら頭を撫で続け、いつの間にか自分も眠りの世界に落ちていった。

 

 眠るという行為にそこまで何かを感じた事はなかった。

 

 だけど、リリアの傍で一緒に眠るというのも意外と良いものだなと、素直にそう思った。







 


 翌朝。



 誰かが足早に近づいてきているのを感じてむくりと起き上がる。

 日も登り始めたまだ早い時間である。


 取りあえず下着とか諸々も変えるようと思い、脱いだところで気配が思ったよりも速く近づいてきている事に気付く。

 

 「あ、待てばよかったかも」


 タイミングが悪い。

 かといってここで慌てると余計に変な事になりそうな気もする。

 しかし時すでに遅し。


 「起きなさい守護騎……士……え?」


 ノックもなく勢いよく開いた扉。

 入ってきたのは黒髪のよく似合う王都最強の騎士。

 チサトさんその人だった。

 リリアは爆睡中。 俺が下半身丸出しでお出迎え。

 

 「……おはよう! いい天気だな!」


 「きゃーーーーーーーーー! 変態は死ねぇ!」


 どう言い繕おうかと考え、最初にでたその言葉に返ってきたのは罵声だけだった。

 実に悲しい……。











 ※おふざけが書いてて楽しくなってくる小話ですよー(*´∀`*)


 アカネ「妾思いましたの」

 ミソラ「どうしたの?」

 アカネ「以前髪型で勝負してダメでしたけど、服装も変えてみるのはどうかしら?」

 ミソラ「……たとえば?」

 アカネ「……水着とか?」

 ミソラ「いいかも」

 アカネ「いっそ何も着ないで近づくのも妾はありと思うのだけど」

 ミソラ「あまい! あまいよあか姉!」

 アカネ「え!? 妾の裸体ではダメなのかしら!?」

 ミソラ「あか姉ちがう! あか姉はえろいからだしてるけどちがう! はだかだからえろいんじゃない! きているからこそえろいんだよ!」

 アカネ「な、なんですって!?」

 ミソラ「いまのあか姉のかっこうも、きものでかくれるらたい! そのむなもとからのぞくうつくしいはだ! みえないからこそもうそうをかきたてられるんだよあか姉!」

 アカネ「なん……ですって……! それは予想外ですわ!」

 ミソラ「……というわけであんいなはだかはえぬじー。 わたしはあか姉にぽにーてーるめいどをおすすめする」

 アカネ「メイド? メイド服でポニーテールにするの?」

 ミソラ「うっふっふっふ。 すべてわたしにまかせて」

 アカネ「なんて頼りがいのある言葉! えぇ、お任せしますわ!」

 ミソラ「ふっふっふっふ」


 数時間後……。



 アカネ「…………」

 ミソラ「……ごめんあか姉。 まさかしょくどうのめいどにされるとは……」

 アカネ「ま、まぁ一日だけでしたから良いですわ。 ……はぁ」

 ミソラ「で、でもかんがえかたによってはせいこうだよあか姉! だってますたーはあか姉をみつけたときにほほをあからめてた! しかもそのあとにかわいいメイドをかくほしたっていってた! ますたーからかわいいをかちえたんだよあか姉!」

 アカネ「た、確かに! ご、ご主人様が妾をか、かわ、可愛いと! くふ、くふふふふ」

 ミソラ「……たんじゅんでよかった……」

 アカネ「今度は二人っきりの時に悩殺して差し上げますわ!」




 

 二人の戦いはこれからだ!

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