万屋奇譚番外編〜最終決戦編〜
Chapter•I〜Swaying thoughts〜
ある日の
ここから物語は、現実は、理想は...終わりへと向かう。
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「少し、踏み込まれ過ぎたな...」
心を許す、とはこういう事なのだろうか?
{そのくらいが丁度良かったのではないか?お主にとっては}
肩に留まった黒蝶の声。
「どうなんだろうな?」
黒衣の者はふぅっと煙を吐く。
{祝杯をお主の店で、と言っておったなぁ...}
その時、抱きしめられた事は今でも覚えている。
{それに、友だと言うた花守達も...今は疎遠になってしまった者も居ようが}
分かってる。様々な出会いがあった。
花守になって色々な事を見て、聞いて、教えてもらった。けれど、今この時考えている事は誰にも言っていない。あの
「...これでいい。情報が欲しかっただけなんだから...始めから、それだけの為に近付いたんだ」
言い聞かせるように、呟くように言うと煙草を吸う。
{それで良いと思うておらぬから、こうして作戦に参加しておるのじゃろう?}
お前の事はお見通しだ、と言わんばかりの口調。
「かもな。でも一番の理由は、影の討伐」
煙を吐き、少し暗い表情で淡々と告げる。
{それはすぐにでも叶うじゃろうて...もう、お主は負けんよ...
鴒黎と呼ばれた黒衣の者は、ふっと口元だけで笑い、
「買い被り過ぎだ。良くてぎりぎりってところだろ?」
言いながら煙草の火を消す。
すると、どこからともなく現れた赤黒い
{...戻るか?}
「ああ。よろず屋へは
黒蝶の言葉に頷き、歩き出す。
「ここからが本当の“復讐”の始まり...」
以前倒した霊魔は、自身とその周りに居た部下達と
「そして、終わりの始まりでもあるんだ」
何の、とは明確には言わず。
刀霊達はそれを分かった上で付き従う。
黒蝶だけは腑に落ちず、こうして時々試すように訊ねてくる。
{本当に、
「まだ変える予定は無い。それが一番良いと思うんだ...ありとあらゆる手段を使って調べて、辿り着いた俺の身体の秘密...それは知人に、友にとってあまりにも残酷だろうから」
そして自分にも。
だからこそ、そうしようと決めた...
この身体はもうこれ以上老化する事なく、人より長い時間を過ごす。
周りの知った顔は皆年老い寿命を迎える中、自分だけがそれを最後まで見送る事になる。
{童と共に来る事も出来ように...}
哀れみを
「最終的にはそうするつもりさ...自害の意思が無ければ、だけど」
そのまま
{この国の、この世の行く末を見たいという思いも、あるのであろう?}
「あるよ。大規模な戦争が近いって噂もあるしな...文明の発達も見たい」
{...それらは童も見たいと思うておる。そのままお主について行くさ...それが例え、}
地獄の底。
「...準備しよう。これで、良いんだ...」
最後は自身に言い聞かせるように、呟いた。
全ては仕事。任務。公務。はっきり分けておかなければ、依存する。考えてしまう。願ってしまう...だから、これで良いんだと言い聞かせる。何度も何度も...
正解だろうが不正解だろうが、答えの無い問いを考え続けるよりはマシだろう、と。
黒衣の者はふぅっと息を吐き、表情を消した。
「......さぁ、仕事だ。ここから先は戦場。戦いのみに集中しよう」
誰にともなく宣言。
そうしなければ刃は鈍り、動きは強張る。決心した筈の心も揺らいでしまうから...
そして一人の花守は戦いの中に自らを投じ、再び感情を、願いを心の奥底へと仕舞い込んだのだった...
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