六ツ目〜彪眞と白虎〜

おいらと白虎びゃっこはおっかちゃんの仕事場で出会ったんだ......





ある日、珍しくおっかちゃんが仕事中においらを呼び出した。

部屋へ入ると、おっかちゃんはいつも通り仕事をしていたみたい。でも、いつもと雰囲気の違うお客。

身なりはしっかりしているけど、役所のお堅い人(おっかちゃんがよく言ってた)みたいで、お酒も呑まずにすぐに帰っちゃった。

おいらはその人にもしっかり「ありがとうございました。またお越しくださいませ」と習った挨拶したけど、おっかちゃんが笑ってた...

なんでだ??


「おっかちゃん?どうしたの?」

「ふふ...あの人はね、いつものここのお客じゃあないんだよ。私に用があって来たのさ」

「ふぅん...」


なぁんだ。店のお客じゃなかったのか...


彪眞ひょうま。よくお聞き」

「うん」

「お前はこれから“花守”になるんだ」

「はな、もり...??」

「そうだよ。お前には視える目とこの...お父ちゃんの忘形見がある」


おっかちゃんは急に真剣になっておいらに刀を見せた。

それは柄巻も鞘も白く、目貫めぬきが青、鍔も柄と同じ色をした刀。脇差って言うらしい。(おっかちゃんに色々教えてもらった!)


「綺麗だなぁ...」

「そうだろう?お父ちゃんはね、代々花守をしていた家だったんだ。それで、子供が産まれたら後継ぎに、って置いて行ったのさ」


今じゃおっんだのか、何処かで生きているのかも分からないけどねぇ...と溜息。


「おいらがそれ、使うの?刀なんか持った事ないよ??」

「大丈夫さね。花守が使う刀には、刀霊っていう神様がついているのさ」

「とうれい?神様??」

「そ。その神様がね、刀の扱いを教えてくれる。彪眞の事を気に入ってくれれば、仲良くだってできるのさ」

「神様と友達になれるの...??」


それはすごい事なのでは?とおいらにも分かった。


「ほら、持ってみな」

「う、うん...」


恐る恐る脇差を手に取り、全体を眺める...

やっぱり白くて青くてきらきらしてる!!かっこいいなぁ...とにこにこ見てたら、脇差が白く光りだした。


「うわっ!?なに?なに!?」


慌てて落としそうになった脇差を握りなおして、それを視ていると、突然目の前に大きな白い虎が現れた。


『おや...これはこれは、小さな契約者様』

「え!?けいやくしゃ??おいらのこと?」

『他に居りませぬぞ、彪眞』

「おいらの名前!知ってんの??」

『勿論。彪眞の父が私の元契約者ですから』

「本当におとっちゃんの...??」

『はい。今は彪眞。君が私のあるじです』


おいら、ぽかんとしちゃった。それ見ておっかちゃんがくすくす笑ってる。


「彪眞、良かったねぇ。刀霊様方は気難しい方が多いと聞いていたから、私も心配していたが...お父ちゃんみたいに優しい刀霊様だね」

「おいら、おとっちゃんの事よく知らねぇけど、この虎はおとっちゃんみたいな感じがする!!」

『私の名は白虎。白い虎と書いてびゃっこだ』

「白虎...おいら、彪眞!よろしくな!白虎!!」

「ふふ...白虎。この子に刀の扱いを教えてやっておくれ。運動神経はとても良い子だ。舞もすぐに覚えるくらい呑み込みも早いから、刀の扱いもすぐに覚えるだろうさ」

『ええ、分かっております。母君。彪眞、これからお前は花守としてこの夕京を、人々を霊魔から守るんだ』

「わかった!!おいら、おっかちゃんやここのみんなの為にも頑張るよ!」


こうして出会ったおいら達。刀を抜くのと振り回すのはすんなりできたけど、しまう...えっと納刀が上手くできなかった...


『振り方も納刀も。ちょっとずつ覚えていけばいいさ』

「むぅ...」

『そんな膨れっ面しないで。明日から実際に外に出て、霊魔と戦ってみよう』

「えっ!?もう??」

『早い方がいいからね。今日はゆっくりお休み』

「わかった。ちょっと怖いけど、おいら頑張るね!!」





その日の夜。おっかちゃんがいつも通り仕事している隣の空き部屋で、珍しくお客が入って来た。


「おっかちゃん?すごくお偉い方来たの??」

「ああ、今日はお偉い方じゃなくて、お金持ちの人だよ」

「そうなんだ...おっかちゃんが相手しないの?」

「ご指名でね、お手伝いに来てくれた人が居ただろう?あの人が大層気に入ったみたいだ」


あの空き部屋は、大金持ちの人やお偉いさんが使う特別室。時々人手が足りない時に来てくれる、綺麗で背が高くて黒くて長い髪の人が入っていくのが見えた。


「今日も綺麗だね、あのねーちゃん...」

「そうだねぇ...ああ、そうだ。あの人も花守だって言っていたから、お仕事で会えるかもしれないねぇ」

「そうなの!?女の人もいるんだ、花守って」


あんなに綺麗で美しい人も刀持って戦ってるんだなぁ...


「彪眞はもう寝なよ?明日からお仕事行くんだからね」

「わかった!おっかちゃん、おやすみ!!」

「ああ、おやすみ」


優しく頭を撫でてくれたおっかちゃん。おいら、にこにこ笑って自分の部屋に戻った。



これから色んな事が起こるけど、今のおいらには知る由もなかった...

同じ歳の友達や知り合いもできて、おいらはこのお仕事が気に入るようになるんだ!!



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