其の参~霊魔報告書~

最近の調査で分かった霊魔の種類をここに記す。  慶永*年/**月

                      

・大蛇:とぐろを巻いた状態で見つかる事が多い。場所は地下道や丘の上など様々。力が強い個体は簡単に人間を締め殺す。狭い場所に現れると少々厄介。


・巨大な犬:人の躯を貪っている事が多く、爪が鋭利で牙も鋭い。動きが俊敏で色々な場所に現れる。広い場所では一人より複数で対処した方が倒しやすい。


・首のない霊魔:懐かしい声で「君、無事だったのか」と後ろから声をかけてくる。振り向き様に斬ればすぐに終わる。遭遇頻度は高め。


・目玉:視界の隅の影から生まれて見つめてくる。特に襲ってこないので、潰せば問題ない。遭遇頻度は低め。


・見知った顔の霊魔:親しい者に化けて騙そうとする霊魔。笑いながら「おいで」と誘ってくる。視る力が強い者には通じない。


・二つ頭の異形:見つめてくるだけで、何もしてこない。霊魔だと思われる。


・猫のようなもの:猫っぽい何か。たぶん霊魔だと思われるが、詳細は不明。鳴いているだけで襲ってこないので、現状は様子を見る。どこにでも現れるので、遭遇頻度は高い。


・真っ黒い影:うずくまっている事が多い。どこにでも現れ、視る者によっては人のような姿にも視える。


・異形の列:百鬼夜行のような、死霊と霊魔が一緒になった列。数が多いので、人出が多い方が対処しやすい。


・生白い腕:側溝のある場所ならどこにでも生えて、蠢く。数が多くとにかく不気味。中長距離の得物を使う者の方が有利。花守の間では「大根」と呼ばれたり、討伐時の名称を「草刈り」という事もある。


・旧友の姿をした何か:擬態する霊魔の類だと思われるが、視る力の強いものにはあまり意味が無い。



―現象の類―


・足音:ひたすらに足音だけが付いてきて、姿が見えない。妖怪・べとべとさんの霊魔版だと思われるが「お先にどうぞ」と道を譲っても出てこない。足音が聞こえた時に刀を振るって斬るか、後ろから誰かに斬ってもらう方がよい。中々面倒。遭遇頻度高め。


・血まみれ:気が付くと全身血まみれになっている。霊魔の血なのだろうか?詳細は不明だが、実に迷惑な嫌がらせ。手拭など常に持ち歩いた方がいい。


・祭囃子:どこからともなく聞こえる。聞こえた方に行くと、霊魔達の祭りが行われている。これも人数多めで対処するのがよい。(現世で行わずに幽世でやってほしい...)


・頭の中に響く声:霊魔が遭遇した相手に送る念のようなもの。その人間が一番聞きたくない言葉が延々と聴こえる。霊魔を倒さないと止まらない。精神攻撃。


・姿無き声:色々と誘惑してくる声だけの霊魔。姿は瘴気に隠れている事が多い。「そんな刀、すぐに折れるよ」「どうして君は戦うの?」「こんな世界放り出して、遠くへ逃げよう」など様々。遭遇頻度は高め。


・曼珠沙華:いつ誰がどうやって活けているのか分からないが、一輪だけ活けられている事がある。曼珠沙華(彼岸花)がある所は日常と非日常の境界になっている場所のため、霊質が揺らぎやすく剥離が進みやすい。至る所で目撃例が挙がっている。

花守の中では「誰かが弔いで活けたのではないか?」と手を合わせていく者もいるし、不気味がって近づかない者も...非常に謎の多い現象。

ちなみに彼岸花には「家に持ち帰ると火事になる」「摘むと死人が出たり、手が腐る」と言った迷信もある...



以上。                     

                        情報収集・まとめ:靭 鴒黎他

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