アフォガート
マリアは渋い顔をしてコップから口を離した。それを見ていたウィレスが「だから言ったじゃないか」とため息をつく。
「やっぱり苦いですぅ……」
たまにはブラックコーヒーに挑戦してみることにしたものの、結局苦くて飲めずひんひんと泣いているマリアに苦笑いをして、しかしカフェオレにしてやろうにも今は家に牛乳がない。かといって自分の分としてコーヒーを別に淹れてしまった以上飲んでやるわけにもいかず。
うーんと頭を悩ませて、そういえばバニラアイスがあったことを思い出した。席を立って大きめの器にバニラアイスを盛り、戻ってくる。未だにカップの中身と見つめ合っていたマリアだが、ウィレスが持ってきたものを見るとそっちに意識が持っていかれた。
「マリア、そのコップ貸してごらん」
「?はい」
マリアから飲みかけのコーヒーを受け取り、彼はそのままバニラアイスの上にかける。マリアはアイスがコーヒーに溶かされてしまうのではと思わず身を乗り出した。しかしコーヒーにいくらか溶け出してはいるものの、バニラアイスはしっかりと形を保っている。
「はい。これなら大丈夫でしょ」
ウィレスに促されるままスプーンで掬い、マリアは口に含んだ。コーヒー味のアイスともやや違うが、カフェオレとも少し違う。だが兎も角ブラックコーヒーの苦味がある程度緩和されていて、マリアは満面の笑顔を浮かべた。
「わあ、ありがとうございますウィレスさん!これとっても美味しいです!」
「ははは、良かったね」
「はい!ちゃんと飲みきれそうです!」
嬉しそうな顔でアフォガート状になったアイスを頬張るマリアをほのぼのとした気持ちで眺めている。後でこのアイスをプレゼントしてくれたベノムに何かお礼をしようと思いながら、ウィレスは自分のカップを手に持ってコーヒーを啜った。
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