後悔

「始祖様」


 黒髪の少女は手を伸ばした。海竜はその首を動かし、人のそれとは違う顔をその手に寄せる。すべすべで柔らかな肌を撫でて、少女はその鼻面にキスをした。

 きゅうきゅう、くるるるる。甘えるように鳴く竜を撫でながら、彼女は楽しげに笑い声を上げた。




 海の始祖は目を覚ます。身体を起こし、額に手を当てた。数秒そうしてから布団を抜け出し床に足をつけ、立ち上がる。姿見の前へふらふらと移動して、鏡の中の自分を見た。


「……」


 指先で自分の髪先を撫でる。少女と同じ、しかし全く違う黒い髪。あの子の髪の方がずっと綺麗だったと思いながら、始祖は目を伏せる。


「……すまない」


 聞く者のいない謝罪は無意味だ。そう理解しながらも、始祖はそれをやめることができない。俯いたまま数分硬直し、それから漸く彼はまた行動を再開した。

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