肩車

「どうしたらそんなに身長が伸びるんですか?まゆも大きくなりたいです!」


 獣人の子供にきらきらとした目で問われ、ノルは呻いた。今日初めて依頼で一緒になった相手だが、下の方の兄弟を思い出すほど無邪気な顔である。親しみこそあれど彼らのなぜなに期を思い出して苦笑が零れた。


「特に気にしたことはありません。しかし、よく寝てよく食べてよく遊べば、三種族は大きくなれるのだと聞きました。」

「うーん、やっぱりそうなんですね……」


 しょんぼりするマユを見下ろし、ノルは困ったように沈黙する。後は体質が関わってくると思うが、それは本人が気にしたところでどうにもならないはずだ。

 それより今回の依頼はかなり危険が伴うはずだが、こんな子供が受けて大丈夫なのかというところをノルは不安に思っている。保護者は止めなかったのかと思いながらも、群に所属しているならばもしかすると見た目と年齢(ついでに行動)が食い違っているのやもと何も言わなかった。


「……根本的には意味がありませんが、肩車でもしましょうか。」

「えっ!いいんですか!?ありがとうございます!」


 うんうん唸っているマユの手を引き外に出て、ノルはそんなことを口にする。表情を明るくして大きく頷くマユを確認し、彼は膝を折ってマユの両脚を肩に乗せて立ち上がった。感嘆の声が上がるのが聞こえる。ノルはほっと胸をなで下ろし、そのまま依頼人の元まで歩を進めるのだった。

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