脳死しながら書いたれいとる
かぷり。トルエノは硬直した。何故今噛まれたのかがわからず、動揺したままレイヴンを見上げた。レイヴンはトルエノの猫耳を咥えたままもぐもぐと口を動かしている。……無心でトルエノの耳を甘噛みしている。本当に何が起きているのかわからないトルエノは誰かに助けを求めようとした。こういう時に限って周囲に誰もいない。と、思いきや足音が聞こえた。
通りすがったスィアツィと目が合う。必死に助けを求めるが、スィアツィはうわっ何あれ・・・というような顔をした後そっと目を逸らし立ち去った。トルエノはうわーーん行かないでーーー!!!と思ったが残念ながら心は通じ合わない。
スィアツィが完全に立ち去ってしまうとトルエノは唸り、肩を落とす。こうなったら直接聞くしかないだろうとトルエノは意を決して口を開いた。
「あのぅ、レイヴン様……?」
「……」
「あの……」
「……すまない、少しぼうっとしていた。どうしたの?」
「何故……私の耳をかじっているのでしょうか……?」
沈黙。その間ももぐもぐとレイヴンは口を動かしている。
「……美味しそうだと思ったから?」
「?」
普段はレイヴンを全肯定するトルエノだが、このときばかりは心底何を言ってるんだ……?と思った。トルエノはそっと首を動かしてレイヴンから逃げる。レイヴンの口からトルエノの猫耳が開放された。そしてレイヴンに向き直ると手を伸ばし彼の額に手を当て、自分の額にもう片方の手を当てる。
「トルエノ。」
「・・・」
「トルエノ、別に体調は悪くないよ。ただ本当に美味しそうに見えたんだ。」
「……美味しかったですか?」
「勿論。」
トルエノはその日からしばらくレイヴンと人一人分の距離を置くようになった。
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