プリマちゃんとキショウくんの話

「私、いつも思っておりましたの」


キショウは心臓がバクバクとうるさく鳴るのを感じた。座り込んだまま彼女を見上げる。自分にのしかかるように壁に追い詰めてきた彼女は、心底楽しそうな顔だった。あまりの距離に顔に熱が集まってくる。彼の顔の両側に、彼女の腕が囲い込むような形で伸びていた。


「あなたは、女性の服が似合いそうだなあ、と。」


……最悪である。

キショウは赤らんだ顔をスン、と真顔にした。


「私たち身長が同じくらいですし、露出の低い服も持っておりますのでそれを―――」

「しかもきみの服なの!?」

「え?はい」


え?ではない。すんなり肯定したプリマにキショウは頭を抱えた。おかしい。男として見られていない気がする。扱いが完全に弟に対するそれだ。

……それを嘆いている場合ではない。不思議そうに自分を見ている彼女を説得せねば。


「なんか……それは……あの……まずい気がする……」


どうまずいかと聞かれると、少し困ってしまうが。プリマはまあ……と自分の頬に手を当てて小首をかしげる。へにょんと眉が八の字になっていた。よかった、理解してもらえたかとキショウが期待のこもった視線を投げかける。


「肌に触れるものですものね、新品を御用意いたします」


キショウは肩を落とした。何一つ言いたいことが伝わっていない。

顔を上げる。プリマは期待に満ちた表情をしていた。


「………………きみの部屋だけでならいいよ」

「えっ?」

「えっ?」

「私の部屋ですか?」


プリマは困ったような顔をしている。なんだ……???と思いつつキショウはプリマの言葉を待った。


「男性と二人っきりはちょっと……」

「その男性に女物の服着せようとしている自覚はある????」


プリマは素知らぬ顔をしている。キショウは肩を落とし、首を横に振った。姉に似ている顔立ちを誇りに思ったことこそあれど、女顔の自分を恨んだのは今が初めてかもしれない。

……せめてもう少し身長が高ければ……。

キショウは今から牛乳を飲んでも間に合うだろうかと真剣に悩み始めるのだった。

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