蝶よ花よ< 6 >

「そんなことしたところで私はあんたのネザーじゃないしあんたの姉じゃないっての!!あんたらの目の前にいるのは全部別の人なのよ!!」


キショウに彼女の言うネザーとは何かが伝わったかはわからない、だが少なくとも彼女の言う姉が自らの姉……頼光のことを指すのはよく分かっていた。


「そんなわけないだろ!!貴様が姉様でなかっただけで僕には他に姉様がっ」


他に、ねえさま?

気づいてはならない、気づいちゃいけない。気づいてしまう、気づくな!

______自分の見ていた姉様は、複数いなかったか?

身体が冷水に浸されたように冷たくなる。震える。違う。違うはずだ。違う、違うと言って欲しい。


「そんなわけない!」


キショウは叫び頭を掻き毟る。指に絡まった髪が無造作に引っ張られ、ぶちりと数本が抜けた。


「姉様は、ねえさまは死んでなんかない、死んでなんかないんだ!!」


キショウはバッと顔を上げて目の前の女を見る。女は冷めた目でこちらを見ていた。彼女は?誰?違う、そう、そうだ、姉様、姉様ですよね?


「なあ、嘘だと言ってくれ」


女は何も言わない。ぺたんと座り込み、そのドレスの裾を掴んで縋り付く。ひっきりなしに涙が頬を伝い落ちていくのを感じながら、必死にキショウは女を見上げた。


「君は、姉様でしょ?」

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