白昼夢

「もしもの話だけど」


いつものように白色は鎮座していた。

伏せられた瞼は当たり前に開かれない。


「あの世界があなたの望む通りに存続したとしたら。

そうしたら、気分はもう少しマシだったんだろうか」


答えはない。

向けられる笑顔はいつものそれで、太陽に似た金の髪が揺れた。


「……。」


白色は一つため息を吐いた。

子供の姿をしたこの体の中で、王が揺れている感覚がする。

部屋にいるのは自分と太陽の幻覚だけ。

白い百合の幻覚やその他のようにずっと囁かれ続けるよりはマシだが、ただただ笑顔を向けられるのもそれはそれで不気味に感じた。




王が夢を見ている。

白色は目を開いた。

ぴ、ぴ、ぴ。

この場にないはずの電子音が鼓膜の奥を揺さぶっている。

ないはずの脳に焼き付いたあの世界の一室。

白い壁に白いベッドの上で、同じように血の気が見られないほど白くなった彼女が眠っている。

管が繋がっている。

彼女は二度と目覚めない。

彼女の髪は今自分が対面している笑顔の幻覚によく似ている。

だがそれがこれの元の人物でないことを自分はよくわかっている。

“お母さん____”




がたんと倒れる音で我に返った。

自分の座っていた椅子が倒れている。

思わず立ち上がった拍子に倒れたらしい。

白色は片手で目元を覆う。

太陽の幻覚はいつの間にか消えていた。

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