第24話 昭和61年・使い捨てカメラ写ルンです
中学時代、遠足にカメラを持って来ている友が何人かいた。私も欲しくって、買って欲しいと言った。「みなはお前を撮ってくれないのか?」と父は訊いたので、「いや、撮ってくれるよ」と答えると、「なら、それでええやないか」と云われた。
父や母は、記念の時があれば、写真は写真屋で撮るものと思っているから、カメラなんかには関心がなかった。
当時、中学生が小遣いを貯めて買うには、カメラは高額商品であった。使い捨てと云えば、カイロがすでに発売されていたが、カメラが使い捨てになったのには複雑な思いであった。家にカメラが来たのは、結婚して妻が持って来てからである。「バカチョンも使われへんの!」と、妻にバカにされたものだ。その僕が大変にお世話になったのがこれである。現在はデジカメを使っているが、それでも、基本操作以外は出来ない。携帯で撮っても、PCにどう取り込むのか分らないので、あまり撮らない。
「写ルンです」は、富士フイルムが1986年に発売したレンズ付きフィルムの登録商標で、同ジャンルのパイオニア的製品である。現在は、デジタルカメラや携帯電話の普及などにより、生産中止になっているのかと思ったら、大幅に縮小されて作っているという。私にとっては、画期的な商品であったが、時代には逆らえない。
ヒットした一つに商品を端的に現したそのネーミングにある。あまりパットしたネームが浮かばないまま、上層部へのプレゼンの日を迎え、その席で上司に「本当に写るのか」と問いただされたときに、開発責任者はとっさに「写るんです」と返答した。その語感の軽快さと、説明いらずの明快さに気づいた責任者の機転によって名前が決定。ルンルン気分で撮れるのルンにして正式決定されたという。私は樹木希林のユーモラスなTVコマーシャルとともに懐かしいモノである。
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