模擬恋愛 - after story -

山本ユウ❶

そんなこともあってから、席替えがあって私とタクヤくんは席もバラバラになった。本当に仮交際以前の通り、特に話すことも避けることもなかった。

交際を絶ってからこれまで、これといった寂しさは抱えなかったし、好きになった秀樹と進展があるわけでもなかった。

しかし私がタクヤくんとの関係を終えた十日後くらいに、タイムラグのように遅れて噂はやって来る。

「ユウ、中重くんと付き合ってたの?」

「前に映画館で見かけたんだけどあれってもしかして……」

「タクヤのどこが良かったの?ユウの方から?」

そんな噂というか、質問が相次いだ。私は特に親友はいないから、誰にもそこまで細かいあらましを語る必要もなかった。その点ではラクだ。

それらの質問に対し私は「うん、まぁ、そうだよ」の一点張りだった。必要以上に話せばタクヤくんに迷惑が行くかもしれないし、だからと言って嘘をつく必要もない。あ、でも実はちょっと芸能人の記者会見みたいな気分で面白かった。

聞く人は、こっちが驚くほどびっくりしていたり、触れてはいけない話だったと自ら決めつけたり、いろいろな反応で面白かった。確かに私は恋愛なんてするキャラじゃないから、タクヤくんと付き合ったことはみんなの大ニュースになるのかもしれない。そんな話が面白いのならそれでいいのか。


はっきりと自覚させられたのは「私から交際を終わらせた」こと。私が秀樹を好きにならなければ交際は続いていたのであって、私が秀樹を好きになったためにタクヤくんとの関係は終わったということ。

模擬恋愛を始めた時、私は嬉しかった。契約に成功したから。でもそれをあえて破棄した、ということは、その分もしくはそれ以上のことができると思ったからだ。私は秀樹への恋を成就させなければいけない。

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