第10話

楽しい一日は過ぎるのが早い。

今日だけは大輝の事だけを考えようと決めた梓はめいいっぱい一日を楽しんだ。

大輝もそれを感じたのか、いつも以上に梓を楽しませようと頑張っていた。

「梓さん!」

そんな一日も終わりに近づいていたとき

「どうしたんですか?」

ニヤニヤして何かを後ろに隠している大輝。

「これを」

大輝が渡したのは、紐で束ねられた青い花。

パーティーなどで貰う大きな花束ではないが

とても可愛らしくて梓はこういう花の方が好きだった。

…そういえば、家にはこの花が沢山植えられていた気がする。

「なんという花ですか?」

「勿忘草。草って言われてるけど、とても謙虚でかわいいでしょ」

「はい、とっても」

「喜んでもらえてよかった」

嬉しそうに笑う大輝。その笑顔を見ると、梓の口角も自然に上がった。

「家まで送るよ」

紳士的なところも、笑わせてくれるところも、それ以外ももっと知りたいと思った梓。

少し、少しだけ大輝のことが好きになれそうと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る