第4話

「昔はこうやってよく2人で花に水をやってたわよね」

「えぇ。懐かしいです。」

いつから相手を意識し始めたんだろう。

何故隠さなければならないのだろう。

そんな疑問はずっとあったが口にしてしまえばこの関係が崩れてしまう。

笑顔を見る度に胸が苦しくなる。

すぐ側にいるのに、何だか遠く感じてしまう。

「ねぇ、藤井」

「はい、何でしょうか」

「何で花が好きになったの?」

梓がそう聞くと、藤井は驚いたような、少し寂しそうな顔をした。

「覚えて、いらっしゃらないのですか?」

様子を伺うように聞く藤井。

梓はその言葉の意味が分からなかった。

「あ、いえ、何でもありません」

藤井はまた花に水をやりはじめた。さっきよりも悲しそうな顔で。

何かを思い出さなければならないのにそれが何か分からない。

また、藤井との距離を感じた梓だった。


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