最終話:二人の天空騎士
「ま、仲良くやろうぜ。光璃も・・・・・・ルインも」
「はい、私はどんなことがあってもお友達ですから」
「オトモダチ・・・・・・とは契約相手と言うことでいいの?」
「ああ、そういうことだ。今日から俺達は友達だな」
ルインを丸め込みつつも取り留めのない話をしながら図書館で時間を過ごす。
彼女には烈の死で思う所はないわけでもないが、ルインは正々堂々と戦った上で英雄の死を悼んでいる様子だった。
今更になって彼女にまで罪を問うつもりは今の連也にはなかったのだ。
そして、図書館を後にした先の廊下。
「やっと終わったみたいね。どうせ、ここだろうと思ったけど」
律羽がまだ照れ臭さを残した顔で立っていた。
まだ授業時間のはずだが、品行方正で頭脳明晰の筆頭騎士様も随分と悪い友人の影響を受けてしまったらしい。
「もう、元に戻ったのか?今日から付き合うからって、そこまで緊張されると俺が困るんだよ」
「す、すぐに慣れるから放っておいてくれるかしら」
「俺が色々な人と話している内にナイーブになってるんじゃないかと思って、来てくれたんだろ?律羽のそういうとこも俺は好きだぞ」
「・・・・・・ま、また、そういうことを」
目線すら合わせられないのに、これから恋人関係をやっていけるのかは不安だったが、ゆっくりやっていくとしよう。
律羽と付き合う前に解決しておかねばならない問題もあるのだが、そこは何とか正面から頭を下げるしかないだろう。
辛くても、苦しくても、二人はもう共に歩むしかないのだから。
そうして、少年と少女は罪を共に抱えて先へと進む道を選択したのだった。
―――時は流れ、あれから四年。
「連也、そろそろ時間よ」
思い返せば少し大人びた容姿になった律羽が部屋で待つ連也に声をかける。
本当は葵も一緒に暮らしているのだが、今日は別の任務で留守にしている。
あの告白以来、律羽とは正式に恋人同士となったので、葵には言葉にならない気持ちはあるものの断りを入れようと言葉を真剣に悩んだ。
律羽が好きだと気持ちをはっきりさせた以上、彼女一筋で行くのは当たり前だと思っていたのは連也だけだった。
何故か、蒼風学園を卒業して移り住んだ部屋には葵も同居することになった。
律羽は生粋の天空都市の生まれで、葵は無駄に度量が広いしで、いつの間にか三人で暮らす流れになっていた。
いかに説得しようとも受け入れられない絶望を味わったのは初めてだ。
「ああ、随分と偉そうな肩書きになったもんだよな」
律羽は再編された騎士団の団長、連也は副団長とまで呼ばれる腕前と成果を持つまでに成長していた。
新たな才能が育ちつつあるものの、未だに二人は天空都市では至高の騎士と呼ばれ続けている。
「さて、行くかッ!!」
二人並んでエアリアルを起動して、空へと舞い上がる。
遠く離れる街並みも四年前とは変わらずに二人を迎えていた。
地上から戻ってきた人材、浮力を供給できるようにと改良を重ねられていた石動の人造獣災、それらを結集してまずは二十年の安寧を天空都市は得たのだ。
これから先はどうなるか、解らなくても一歩ずつ進んでいこう。
二人の姿を見て、手を振ってくる子供に手を振り返す。
「・・・・・・まだまだ頑張らなきゃな」
「ええ、私達二人でね」
どこからか、子供達が楽し気に紡ぐ歌声が聞こえた。
今日も天空都市は平和で、連也は未だに罪を抱えながら生きているのだ。
蒼風学園での復讐の歌は終わり、新たな時代が歌われる。
新しい未来へと、可能性へと、二人は向き合い続けるだろう。
人は過去に過ちや、失敗を繰り返す生き物だ。
しかし、前に進むことで過去を消すことが出来なくとも新しい風と出会うことができるかもしれない。
辛くとも痛くとも、進む先に追い風が吹くと信じて。
―――ほんの少し、先の話。
天空都市の発展の為に尽くし続けた二人の英雄を人々はこう呼んだ。
気高く、勇敢なる天空騎士。
後に二人の罪も功績も全てが語り続けられるとしたならば。
この復讐と希望の物語に名前が与えられるとしたら。
そう、きっと———。
天空騎士の蒼風歌 END
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