天空騎士の蒼風歌 - エアリアル・アリア -

シカノスケ

プロローグ:天空都市


ある時、友人の噂話に聞いたことがある。



“この街の上を、空に浮かぶ都市が通過する”と。


UFOだとか飛行機の見間違いだとか人々が噂する中で、最初から都市の存在を信じた少年がいた。

今は以前より機械技術も格段に進化し、研究すれば技術的には可能かもしれない。


それでも、空を飛ぶ都市は些か現実味に欠けていた。


そもそも、そんな都市を空に建設して誰が得をするというのか。

噂が初めて広まってから六年が経過しても、天空都市の存在を疑わない少年は今日も能天気に呟いていた。


「・・・・・・いい風だな」


彼は空に浮かぶ都市があることを知っていたのだから。


海の見える高台に行くのは習慣で、特に予定がない日は必ず寄って空と海を眺める。


学校から寄れるので、趣味も必然的にサイクリングになった。


「そうだねー。海って何か落ち着くよ」


長く艶やかで茶色がかった髪をした少女が隣で応じる。

容姿端麗だが表情に残ったあどけなさが、それを可愛らしいという表現に当てはめる。

年の頃は少年と同じ程度になる。


彼女は少年とは一蓮托生と言える間柄だった。


そして、習慣を何年も続けた日々の果てに。



―――彼が見たいものがようやく見えた。



「あれって、まさか・・・・・・」


遠くの空に浮かぶ、あってはならないもの。

少年と少女は顔を見合わせる。



二人にとって待ち焦がれたもの。



そうして彼は・・・・・・。



「待ちくたびれたよ、天空都市」



歪んだ、それでいて愉し気な笑みを浮かべたのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る