第3話 五分病

学校の屋上にて、未樹は一人の科学者に遭遇した。


「あなたね! 雑貨舞子! 世界にこんなもの流行らせた張本人は!」


「やれやれ、人を何だと思ってるのやら。私はアプリを発展させ、人類の未来に

多いに貢献してるんだ、その崇高さがわからないのか」


未樹が失礼なことは言うまでもない。

そしてこの白衣を纏った少女のいうことも事実である。

若干16歳にして、SNSの進化系5ミニッツの作成者である。

5ミニッツとは、5分という制限の中で、様々な動画や配信をしたりするサービスで、現代人にあったエンターテイメントがお手軽に楽しめるものである。


「あなたのせいで5分以上の集中力がなくなる人が大量に増えるわ!!!!」


指をびしっと突き立てる未樹。


「ふふっ、そんなことあるはずがない。ちょっとしたお笑い芸人を見てるようだ、

それに仮にもし集中力が低下したとしてどうなるの?」


「もし5分しか集中できなかったら……世の中カップ麺しか食べない人が増えるわ!!!」


「5分で料理なんて作れるわ」


「なんですって……」


「私の専属コックに作らせればすぐだわ」


「庶民の話をしなさいよ!庶民の!」


「世の中5分でできることだらけにすればいいじゃないの、映画も食事も睡眠も。人生の密度がより濃密になるじゃないの」


うっとり悦に浸る舞子の顔はさながら発狂した仏のように未樹は見えた。


「この邪教徒めえええええ! そんなのウルトラマンぐらいしか喜ばないじゃないのおおおおおお!もっとブサイクにしてやるうううう」


どこからともなく亜沙子現れる。


「ダメでしょ、未樹」


「い、いつの間に雑貨と入れ替わったの!? へぶあああ」


亜沙子、未樹にビンタかます。


「だってこの邪教徒が悪い!!!!!へぶあああああ」


亜沙子、未樹にさらに強いビンタ。手型つく。


「お家、帰ろうね」


亜沙子のおどろおどろしい雰囲気に未樹はたじる。


「は、はい」


「ごめんなさい、この子、こういう病気なのよ、雑貨さん」


「ふふっ、面白い子でした。この子の否定力を取り出して何か創りたいぐらいだったわ」


5分教総帥、法悦する。

その姿に亜沙子、未樹身震い。


「帰ろう、未樹」


「うん」


二人はその場を立ち去る。


「未樹……ね。あなたもいつか5分病にさせるわ」


人工的な風がどこかへと吹き抜けていった。

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