10
そう思ったとき、ばん! と誰かに頭を叩かれた。見ると、そこには担任の朝風先生が怖い顔をして立っていた。棗は慌てて真面目に授業を受ける姿勢を整えた。そんな棗を見て、隣の席の木下亜美がくすくすと小さく笑っている。
「頭、叩かれちゃったね」
授業が終わると、なぜか嬉しそうな顔で亜美が言った。
「授業中に一ノ瀬くんが、ぼーとしているのはいつものことだけど、今日はとくに油断してたね。なにかあったの?」亜美が聞く。
「猫を拾ったんだ」と棗は答えた。すると亜美は「え!? 本当!!」となぜかとても興味津々と言った様子で、この話に食いついてきた。(まるで昨日の柚みたいだった)
棗は亜美に「本当」と答える。
すると亜美は棗に質問攻めをしてきた。……いつ、……どこで、……どんな姿をした猫を拾ったのか、……なぜ(あの一ノ瀬くんが)その猫を拾おうと思ったのか、……そして一ノ瀬くんが、その拾った猫をこれからどうするつもりなのか。
そんなことを亜美はとても楽しそうに聞いてきた。棗はそれらの質問に多少の黙秘をしながら、ある程度正確に答えていく。
「それで猫のことを考えてたら叩かれちゃったんだ。ふふ、一ノ瀬くんにも、そんな可愛いところがあるんだね」亜美はそう言いながら、ぽんぽんと棗の腕を二回軽く叩いた。亜美は自分の椅子を移動させて棗の机の横にぺったりと張りつけると、机の上に肘をついてその上に頭を乗せている。これは亜美が自分の興味のある話題のときによくする行動で、だからおそらく亜美はもっと猫の話を聞かせて、と僕に言っているのであり、同時に亜美は(今まで全然知らなかったけど)猫が好きなんだな、と棗は思った。
棗は猫の話を亜美としながら頭の片隅で、授業中にぼんやりと考えていたことを思い出していた。
最初、僕は猫のことを考えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます