9
昨日の雨が嘘のような晴天だった。
こんな日は教室の中で授業を受けているのがとても勿体無いという気分になる。人生には勉強が必要だということも、今の時間が贅沢な時間だということも理解できる。でも、それと同じくらい、僕は外に行きたかった。あの青い空の下を、自由な風の中を、自分の足でもっと歩いていたかったのだ。
勉強した時間と同じ時間だけ、外を歩きたかった。
足し算した分だけ引き算をしたかった。
そうやって、自分をできるだけ平坦にしたかったのだ。そうしたいという強い欲求に棗の心は支配されていた。自分でも、どうしてそう思うのかは、わからなかった。もしかしたら大人になればわかるのかもしれないけど、……とりあえず、今の棗にはわからなかった。
これは僕の個性なのだろうか? それとも、思春期特有の普遍的な『なにか』なのだろうか?
それすら判別できなかった。恥ずかしいから友達にも相談できない。勉強ならいくらでも教えたり、逆に教えてもらったりできるのだけど、こういうことはそうはいかない。少なくとも棗にはこういうことを相談できる友達は今のところいなかったし、たぶんだけど、一生できないとも思った。僕はひねくれ者だ。それが僕という人間なのだ。
……これは逃避だろうか?
僕はただ、現実から逃げているだけなんだろうな。
……自由になりたい、と強く思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます