8
「ごちそうさま」と柚が言って席を立った。いつもより少し早い時間だ。なにか予定があるのかもしれない。
「もう出かけるの?」棗がそう聞くと柚は「うん」と答えた。
「なら、僕も一緒に行くよ」と棗は言う。柚は「いいよ」と言って笑った。
二人は二人一緒に玄関で靴を履き、ドアを開けて外に出る(猫はお留守番だ)。鍵をかけて振り返ると、柚は道路脇にいて、きょろきょろと辺りを見渡していた。友達を探しているのかもしれない。
「待ち合わせ?」棗が聞く。
すると柚は「ううん。なんでもない」と答えた。
「出発してもいいの?」棗が聞く。「うん」と柚はうなずいた。「そう」棗はそう言って柚と一緒に並んで歩道の上を歩き始めた。
途中で、柚の友達と合流し(やっぱり、友達を待っていたのかもしれない。柚は遠慮をして本当のことをあんまり人に言わない性格だった)棗は柚たちと別れて一人で自分の学校に向かった。
学校はいつも通り退屈だった。だから棗は机の上でずっと、家に一匹だけで残してきた猫のことばかりを考えていた。
棗は窓の外に目を向ける。
そこにはとても鮮明な青色をした夏の空が広がっていた。所々に白くて大きな雲が浮かんでいる。それはとてもゆっくりだけど、確かに空の中で動いていて、徐々に形を変えていた。
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