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「とりあえず、なにか食べさせてあげたいけど……、ミルクでいいのかな?」柚はそう言って棗を見た。棗は「それでいいよ」と柚に答える。
柚は冷蔵庫からミルクを取り出して、それを手頃な深さのあるお皿の上に注いで、猫の前に「ほら、お腹空いてるんでしょ? 飲んで」と言いながら優しく置いた。猫は柚を見る。そしてそのあとで、なぜか棗の顔も見た。棗はとりあえず猫に笑いかけた。すると猫は弱々しくお皿の中のミルクを飲み始めた。
柚が笑顔で棗を見る。棗は猫のときと同じように、柚によかったね、という意味を込めて笑いかけた。それを見て、柚も笑った。
しばらく猫の様子を見ながら棗と柚はリビングでくつろいでいた。その間に棗はお風呂場でシャワーを浴びて雨を落とし、猫の土で汚れたシャツを洗濯した。そのあとで適当に余り物を選んで軽い食事をとった。すべてが猫の後回しだった。猫を飼う、ということはこういうことなのかもしれない。そう考えて棗は苦笑いをする。でも、自分で拾ってきたのだからしょうがない。責任は僕にある。猫にはないのだ。
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