2019.7.18
てん、てん、と灯篭に火が灯る。
夏祭りの夜。私は中学生になって、同級生の子と長い神社の階段を降りていった。道には石灯籠が沢山並んでいて、幻想的なぼう、とした明るさだった。
階段を降りた所に的当ての店があった。かくしゃくとした老人が一人、「おめえさん達、やってくかい」と煙管をふかしていた。
一緒の子が矢を投げた。当たらなかった。
私が投げる番になった。
その時、なんと言うべきか。身体の力が酷く抜けて自分の意思で動かない、なにかに引っ張られている、脱力に近いような、取り憑かれているような、そんな身体の変調を覚えて、必死に投げた。
一つの的に当たった。周りに矢が沢山刺さっているけれど、その的の中心の真ん中だった。
「やるねぇ。おめえさん。一等賞だ」
一緒にいた子が「わ! 凄いねぇ!」とはしゃいでいたけれど、私は酷く疲れた気がした。
景品は旅行のセットだった。二泊三日だ。宛先は書いていない。
多分、私は何処かに呼ばれているのだ。
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