2019.7.17

『今年も白葡萄の実がなり、特にロゼは色付きが良く――』

 ニュースで今年の葡萄の収穫の話題が流れている。今年は特に大粒で、ワインにも適しているらしい。

 この季節はいつもそうだ。

 私の夫は白葡萄の写真が掲載された新聞を読んでいた。

「今週末が取れ頃だそうだよ。仕事は休みだ」

「私は仕事だ」

「僕だけで行こうかな。明大前には良い葡萄園がある。美味しい白葡萄を堪能して来るよ」

「酷い」

「冗談だよ。はは」

 家族の団欒と言う一幕。のんびりとした食事の風景。

 起きてから思った。食事の最中にそんな話題を出す家族ではないし、何故明大前なのか。明大前は、語源が『明治大学前』と言う特急が停る京王線の駅だけあって、そんな牧歌的な場所ではない。

 私の夢は不思議と季節を採り入れているが、葡萄もそろそろだ。一番美味しいのは秋だが、もう店頭に並んでいる。だが、私はスーパーに寄る事は無い。

 私は何を見たのか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る