2019.6.24-2
私は中学生位の年齢で、学校でいじめにあっていた。
だからと言って辛いとか悲しいとか、そう言った思い出はなかった。ただ、「いじめをする奴なんて馬鹿ばかりだ」と見下していた。
なので、同じくいじめにあっていた女の子に同情はしなかった。
丸々と太っていて、ピンクのワンピースから太い腕が肉の段を作って生えている。長い黒髪で、眉毛がげじげじの毛虫みたいで、顔に何個かホクロがあった。
それが、如何にも「いじめて下さい。私は不細工で気弱です。いじめられても何も反撃しません」と言う表情で眉を下げてにこにこと笑っていた。
私は彼女がいじめにあうのは当然だと思っていたし、それに関して特に感想を持たなかった。
保健室に呼ばれた。口髭の生えた保健医がいじめについての話を聞いていた。私はいじめについて言う事がないので、最近夢を日記につけている事を話した。
「そんな事をするものじゃない。あれは本当に気が狂う」
そう神妙に保健医が呟いていた。
それから、例の豚の様な少女と仕切り越しに座って対面した。
保健医が「制限時間内に相手に対して思い浮かんだ事を言って御覧」とストップウォッチを持って言うので、それが押されると、私はぽんぽん、と何個か攻撃的とも言える言葉を発した。少女も吃りながら何か言っていたが、私の半分も発言していなかった。
保健医が「そこまで」と言うと、「70%程か」と何かの数字を囁いていた。なんの数字かは分からない。
それから、豚少女は、私に「や、優しいんだね」と暑苦しい笑顔で微笑んで来た。私は何も感じなかった。
修学旅行が目前に控えていた。銀の流線型の形をした小型飛行機で、私達は旅立たねばならなかった。
修学旅行の当日、煙草を咥えた私の隣には、「来いよ。お前みたいな奴は好きだ」と言う、からりとした気風の良い男の子が呼んでくれて、いじめられっ子の豚少女の姿は見えなかった。
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