第190鱗目:飛んで行先は、龍娘
「うぅぅー……さむいー……さっむーい」
もう2月も終わるし一番寒い時期は終わった筈なのになぁ……このもこふわにゃんこうきぐるみパジャマが無ければ僕はきっと冬眠していたであろう……
「おはよー……あー、リビングあったかーい」
「ふふふっ、おはよー鈴ちゃん。もうそろそろ起きてくるだろうってエアコンつけてあっためておいたからね。はいココア」
「ありがとちー姉ー。ふみぃー」
まだ朝日が差し始めたくらい朝早い時間、真っ白なにゃんこうモデルのきぐるみパジャマ姿の僕は、くぴくぴとちー姉から貰ったココアを飲みながらカレンダーに目を向ける。
そういや今日から来週までコロン?とかいう病気のせいで連休かぁ……学校からは出るなって言われてるけど、食材とか足りないし買いに行かないとなぁ。
「ねぇちー姉」
「なぁに鈴ちゃん」
「食材とか足りないし、僕お昼過ぎくらいに買い物行ってくるねー」
「あー、そういや食材もうあんまり無かったねぇ……んー、でもやっぱり鈴ちゃんが外出するのはダメじゃないかなぁ」
「なんで?」
「だってほら、今新しい病気が流行ってるでしょ?万一それに鈴ちゃんが感染して、更に新しい病気に進化したりしたらもう手が付けられなくなるでしょ?」
うぐっ!た、確かにそれは危ないけど……
「で、でも!僕ってウイルスとか毒とかに対して物凄い免疫あるんだったよね!?ならコロ、コロー……コロにゃっ……こほん、そのコロなんとかも大丈夫じゃないかなーって」
そう!確か僕ってすっごい免疫力高いんだよね!だから出ても多分大丈夫!
「うーん……確かに鈴ちゃん今の風邪より感染力高いウイルスとか投与しても大丈夫だったしなぁ……」
いやそんな事してたの!?怖っ!
「とりあえず三浦さんに聞いてみるか……外に出ていいかどうかはそれからでいいね?」
「うん!」
困り顔ながらもちー姉にそう言われた僕は、翼を軽くバサリと動かして尻尾を緩やかに振りながら元気よく返事を返すのだった。
そして翌日……
ーーーーーーーーーーーーー
「んーしょっ……と、それじゃあいってくるねー」
「「「行ってらっしゃーい」」」
リュックなんてものじゃない超巨大な袋を手に持ち、ちー姉達三人に見送られた僕は大きく翼を羽ばたかせ、目的地へ向かうべく寒空へと舞い上がる。
お昼前とはいえ普通に気温低いし風は強いし、やっぱり空は寒いなぁ……
「でもこれだけ高く飛んでればそのコロなんちゃらも無いだろうし、多分大丈夫だよね!」
先日、あの後ちー姉が三浦先生に連絡を取った所、実は毎月2回日医会で行っている健康診断なんかの時にそういった病気への実験もしていたらしく、あっさりと許可が出た。
とはいえやはりもう一年も経ち、この街の見慣れた存在に僕自身なり始めているとは言え、相変わらず不特定多数に触られたり絡まれたりするので人混みは避けろとの事だった。
という訳で今日は人の多いであろういつものデパートとかスーパーは避けておいて、前々から気になってたあそこに行ってみるつもりだけど……
「あーいう場所は久しぶりだからなぁ……上手くやれるんだろうか。というか純粋なお客さんとして行くのは初めてじゃないんだろうか……っと、見えてきた見えてきた」
いつも飛んでいく方とは真逆、まだ数回しか飛んで来た事のない方へと僕がそんな事を考えながら飛んでいると、眼下に目的地である長く続く道を覆う屋根が見えてくる。
その上空からでも一目瞭然で分かる場所、それは僕にとっては浅からぬ関係のある場所、商店街であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます