第189鱗目:来客!龍娘!

 ピンポーン


 誰だろ、こんな朝早くから。


 ある日の朝、ちー姉は日医会に行く為に、僕達は学校へ行く為にそれぞれ制服へと着替え朝ご飯を食べていた時の事、来客を知らせるチャイムがリビングに響き渡る。


「アタシ出てくるわね」


「ありがとうさなかちゃん。お願いね」


「たふかふー」


「鈴はちゃんと飲み込んでから話しなさい」


「ふぁーい」


「でもこんな朝早くから来るなんて誰なんだ?」


「なかなかな迷惑知らずだよねぇ」


 集金とか宗教勧誘とかかなぁ?できれば学校遅れたくないし長居はして欲しくないんだけどなぁ。


「迷惑知らずで思い出したけど、鈴ちゃんが表に出たばっかりの頃にさ、よくBouTuberとかすっごくテンションの高い大学生みたいな人達に鈴ちゃん絡まれてたよねー」


「そういやそんなのあったねー」


 いきなり突撃取材ーとかばえーとか言われながら動画撮られたり写真撮られたりして本当に迷惑だったよ。


「まぁ最近もまだ時々現れるのが凄い所だよな。頑張れよ鈴香」


「もー、他人事だと思って……礼二も巻き込んでやるから覚悟しろー」


 そんな風に僕達が昔の思い出話に浸りながら朝ご飯を引き続き食べていると、リビングに焦った様子でのさなちゃんが飛び込んできて、それを見た僕達は思わずギョッとする。

 そしてそんな僕達に、さなちゃんは小声ながらも声を張って──────


「二人共!ちょっときて!」


 そう、必死の形相で言ったのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーー


「それでなんだよ、いきなり来いって」


「何かあったの?それに足音とか立てないようにって」


「いいから、見れば分かるわよ」


 さなちゃんがここまで慌てるなんて……なんかヤバいのでも来たんだろうか?まぁ見ればわかるって言ってるし、とりあえず見てみますか。


 さなちゃんに呼ばれ、そろりそろりと玄関に歩いてきた僕と隆継はさなちゃんにそう言われ、何があるのだろうとインターフォンのカメラ映像をオンにして写っているものを見る。

 するとそこには──────


『おぉはようございますぅ。本日は我らァが神ィをお迎えに上がりましたァ』


「「ひいぃぃ!?」」


「しっ!静かに!」


『ん?今声が聞こえたような……』


 どうみてもヤバい奴という感想しか出ない如何にもヤバい奴な服装のヤバいオーラダダ漏れのヤバそうな喋り方のヤバい奴らが、インターフォンのカメラに映っていた。


「い、いやだってあれっ!あれ絶対ヤバい奴じゃん!」


「なんだよあれ!我らが神をうんたらかんたら言ってたぞ!?」


「まぁ間違いなく鈴の事でしょうね……」


「僕ぅ!?」


 なんで!?僕何にもしてないのに!普通に生活してただけなのに!


「だってほら、この家に居る人で崇められたりされそうなのって鈴くらいしか居ないじゃない」


「うぐっ、い、いや、でも、だからって僕が崇められる理由が──────」


「それが特に何をしなくても、崇められる理由がなくても人は自然現象や化学では証明出来てない超常の力や人ならざる者を神として崇めたりするものなんだよ」


 自分があんなおかしな人達に崇められているなんて信じたくなく、言い訳してた僕の後ろから何かをしに行っていたちー姉が僕にそう言って落ち着くように頭を撫でてくる。


「どうでした?」


「三浦さんに頼んで家の周りに仕掛けてある監視カメラ確認してもらったんだけど、どうやら囲まれてるみたいだね。もう三浦さんにも警察に働きかけて貰ってるから安心して」


「流石ちー姉!ありがとー!」


 この姿になってから一番ゾワッとしたかもしれないから本当に助かったよー!


「私の可愛い鈴ちゃんを怖がらせるわけには行かないからね。それじゃあ皆、危なくないようしっかり戸締まりして落ち着くまで静かにしておきましょ」


「「「はーい」」」


 この後、警察が来た事により無事にこの気味の悪い出来事は収束した。しかし、僕の心にはまだなんだかありそうな、そんな不気味な予感が渦巻いていた。

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