第168鱗目:ボーイズ&ガールズ
「よしお前ら、準備はいいな!?」
「「「「「おぉぉぉおー!」」」」」
「覚悟もいいな!」
「「「「「おう!」」」」」
二日目の夜、色気のいの字もない野郎共しかいない男部屋、昨日は枕投げやカードゲームで大盛り上がりしていた男達は今、昨日とは違う熱気に包まれていた。
何が違うのか、その理由は────────
「それではっ!ただいまより「1から3組美少女ランキング」を発表するっっっっ!」
「「「「「うおぉぉぉおお!」」」」」
「盛り上がってんなぁ」
「だなぁ」
青少年交流の家での合宿のメインイベントと言っても過言じゃない、前日から用意されていたこのイベントが行われているからである。
「まぁ俺らも投票してるから完全に他人事じゃないんだけどな」
「確かにね。それで隆継は誰に投票したんだい?」
「俺か?そうだなぁ……鈴香かサナのどっちかと言っておこう。んで、龍清は誰に投票したんだ?」
「虎白一択に決まってるだろ?」
「そう言い切るくらいなら当の本人の想いにも気がついてやりゃあいいのに……」
「ん?何か言ったか?」
「別にぃー。さて、いよいよ上位3人の発表みたいだぞ」
龍清と隆継が少し離れた場所でそんな会話をしていると、また盛り上がりのボルテージが1段階上がったのを感じ、隆継はそう言って男共が集まっている場所へ目をやる。
「それでは上位3人は同時にいくぞ!1位!朱雀峰さん!二位!柊さん!3位!天霧さん!」
「まぁ思ってた通りというか」
「確実にあの3人になるよなぁ……本当に特出して顔がいいし」
「だな。まぁ正直天霧さんが1位じゃないのは驚いたけど」
「お?あんなに愛しの幼馴染を推してたっていうのにか?」
「う、うるせぇ。だって天霧さん本人に自覚はないんだろうけどさ、あの整った顔は人がどれだけ頑張っても適わないだろ」
「確かにそれには同意する。その上で当の本人さんの言葉を丸々借りるんだが「僕ってほら、綺麗って言うより可愛いの方じゃん?」だそうだ」
「あぁー……言われてみれば確かに。あれは綺麗というよりも可愛いだ」
2人が割と夢中になってそう話していると、先程まであんなに盛り上がっていた部屋が静まり返っていた事に気がつく。そして2人が何事かと改めて周りを見るとそこには……
「んで、そのトップスリーであるあの3人と仲がとてもよろしいお二人さんはどうやってあそこまで仲良くなったんだい?」
「え、えーっとそれは……」
「お、幼馴染だから……?」
なんだか和やかじゃない空気を漂わせた男子達が取り囲むようにして立っていた。
その威圧感に2人が言葉をつまらせながらそう説明すると、それを聞いた男達はニッと心のこもってない笑顔を浮かべ───────
「「「「「覚悟っ!」」」」」
「ちょっ!やめろォっ!?」
「苦しぃ!ギブ!ギブアップ!」
たっぷりと2人をお仕置きしてあげたのだった。
ーーーーーーーーーーー
男部屋でそんな戦いが繰り広げられているのと同時刻、女子部屋では……
「それじゃあ、恋バナ始めるよー!」
「「「「「わー!」」」」」
「やっぱり始まるのねこういうの。まぁ予想はしてたけど」
「女の子の主食は色恋沙汰と甘い物やからねぇ~、ウチらも混ざる?」
「アタシはいいわ、好きな人も居ないし。それに主食も炭水化物だし」
「わおリアリティ」
恋バナが繰り広げられようとされていた。
「でもウチは知っとるでー?さなっちが地味に週一くらいでラブレター貰っとるの!しかも男子からだけじゃなくて女子からも!」
「その情報を仕入れる技術は流石と言っておくわ、だからこそアタシが全部断ってるのはしってるでしょ?」
「うぐっ」
「それに、どちらかと言えば色恋沙汰はアタシよりも虎白ちゃんの方が今はあちちなんじゃないの?」
「うぐぐっ……そ、それはぁ……」
恥ずかしくてそれ以上言えないのか、耳を赤くしながら俯いてモジモジとし始めた虎白を見て、さなかは髪の毛を梳きはじめる。
「あらあら、言えないって事はそれくらいってことかしら?」
「ちがっ!そんなんじゃ……」
「そんなんじゃ?」
「そんなんじゃ……ない、のかもしれへん…………ウチ、りゅーくんの事考えるとな、幸せなんや。でもそれがどんな気持ちなのかはよーわかっとらんくて……」
「……なるほどね。大丈夫よ虎白ちゃん、何があっても私達は味方だから」
「うん、ありがとうさなっち。でも元凶はさなっちやで?」
「さぁ?なんの事かしら」
「なになに!?2人とも好きな人の話してるの?」
「えーっとそれは……」
「鈴には好きな人が居るのかなって話よ。ほら、アタシ達あの子と仲いいじゃない」
さなかはいきなり話しかけてきた恋バナで盛り上がって居た女子の1人にそう言い、虎白の想いを下手に弄らせないよう何かと話題な尻尾と翼のある友人を使い、話の方向を上手く操るのだった。
ーーーーーーーーーーー
男部屋と女部屋、それぞれが盛り上がりを見せてる中、一方その頃──────────
「はふぁー……やっぱりコーンスープは美味しいなぁ~♪」
「あ、天霧さんこんばんは」
「はいこんばんはー」
「この席貰ってもいいかい?」
「いいよー」
「あ、天霧さんだー。その翼のカバー綺麗だねー」
「でしょー?手作りなんだー」
男子棟と女子棟の間にある小さな休憩スペースにて、鈴香は沢山の生徒達とのほほんとした空気の中過ごしていたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます