第161鱗目:影での出来事
「……………………はぁ……疲れた」
深夜も過ぎ自身の静かな事務用の部屋が更に静かに感じられるような時間、三浦は1人机に向い書類の山を前にそうボヤいていた。
「たった数日、それも文化祭という限られた人しか来れない筈なのに、それでも普段鈴香に関わりのない人が接触する機会があるだけでこれだ」
何がどうしたら同じ町、それもたった三日で不審者の逮捕、捕縛数が80件以上になんてなるんだ?
しかも凶器まで持ってるやつが確認しただけで10人ちょっと居るって、ほんと何事だよ。
しかもその凶器が、えーっとなになに…………
「ナイフ、爆弾、鉄棘、毒薬、仕込み刀、拳銃、ガス、人形爆弾、スナイパーライフルその他もろもろエトセトラエトセトラ……」
うちの警備隊こと金城先輩率いる撃滅隊はやっぱり優秀だなぁ…………いやまて、ちょっとまて、スナイパーライフルってなんぞや。しかも横に括弧つけて対戦車って書いてあるぞおい。
まるでバイキングかと言うような様々な危険物を見て、もはや驚きより呆れが先に出て流し読みしかけていた三浦は一際物騒な単語に思わずツッコミを入れながらその凶器関連を改めて確認する。
もし鈴香を殺すにしても対戦車ライフルはやり過ぎだろう……跡形もなく吹き飛…………ばないんだろうなぁ、あの鱗戦車の装甲より硬いし。
「えーっとそれでこれの内容は……鈴香の高校より2km程離れた街中、焦った様子で走る長物を持った男を発見、捉えて持ち物を確認した所凶器を所持、逮捕に至る」
焦った様子で走る?何かから逃げてたのか?
「何から逃げていたのか男に聞いた所「あの距離で見られたんだ!2キロ!2キロも離れてたんだぞ!?あいつは化け物だ!」と証言……ははは」
…………きっと鈴香に勘づかれたんだな……あいつの勘は本当に鋭いからなぁ。あれが本当の野生の勘ってやつだろう。
思わず苦笑いを浮かべながら犯人に何があったかを考えた三浦は、新しく送られてきた資料を手に取ると、そこに書かれていた内容に怪訝な顔をする。
「捕縛者の内15人に共通点あり?ターゲットであろう鈴香の全く同一の写真、鈴香の鱗のような模様が入った道具、その他枠だけで何も書かれていない紙を複数枚所持……」
集団での鈴香の殺害?だが凶器の所持はないとなると平和的なものを覗いて出てくるのは……
「鈴香を何らかの対象にしたカルト宗教か……?一通りこの仕事が片付いたら調べてみるか…………はぁ、田上が何故が刑務所の外に居た件で手一杯だというのに、頼むからこれ以上面倒事は増えないでくれよ?」
俺の本来の仕事は日医会内から外への情報統制と、新医療技術のまとめとかだって言うのに……まぁ、鈴香の為だし仕方ないがな。
数日前にあった鈴香の文化祭で増えた新たな懸念を感じつつ、三浦は可愛らしい笑顔を浮かべている鈴香の写真を見てふっと笑顔を浮かべそう思う。
まぁそれに悪い事ばかりでもないさ、なんてったって叶田と柏山が結婚するんだからな。これ以上にめでたい事はないさ。
「前々から付き合ってたらしいが、きっと鈴香に関するあれやこれやがいい一押しとなったんだろう。というか俺が祝儀とか読むべきなのか?」
いや、祝儀はきっと鈴香に放り投げられるとみた。だから俺はあえて何もしない!
決して、決っっして面倒臭いとかこれ以上仕事を増やしたくないからでは無いからな、うん。
「というか、この話もそろそろ鈴香に持っていかないとなぁ……こればっかりは俺達じゃ突っぱねる事は勿論、どうしようも無いからなぁ……」
三浦はそう言うと、机の上で最も目立つ場所に置かれた手紙を手に取り、部屋の隅にある金庫へと仕舞い込み、自身の机へと戻り仕事を始めた。
その三浦の手により厳重に仕舞われた手紙は厚生労働省、及び日本国政府より鈴香への手紙、いや召喚状に近い物だった。
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