第 162鱗目:冬眠?龍娘!
「鈴ー、もう朝よ。起きなさーい」
「んんぅ〜……もう後すうじゅっぷにゅぅ〜…………すー……」
なんか喋ってるわね……寝言かしら?
「鈴ー?入るわよー?…………ってまだ寝てる……すーず、鈴ってば、起きなさーい!」
「やぁー……」
「くっ……寝ててもあいっ変わらず馬鹿力…………というかいつもなら1番に起きてるくらいなのに……今日は調子が悪いのかしら?」
もうそろそろ着替え始めないと学校に間に合わない時間、隆継と違い珍しく起きてこない鈴を起こしに来たアタシはモゾモゾと動く布団を前にそんな事を呟いていた。
「あったかもふもふ……」
「もう。ほら鈴、もふもふしてないで起きなさい、遅刻するわよー」
「さむいのやぁー」
まぁ確かに寒いけど…………寒い……?そういや今日から一気に冷え込むって昨日テレビで言ってたような…………原因がそれならもしかして────────
「冬眠?」
ーーーーーーーーーーーー
「──ちゃん─きて、鈴───起き───」
もうちょっと……後1時間……いや半年……なんなら暖かくなるまでぇ………………
「起きなさーい!」
んぅんっ!?
「なっ、なにっ!?ってあっ、ちょっ!んんっ!ちーねっ!尻尾の先は……んあっ!」
「あ、起きた起きた。おはよう鈴ちゃん」
「はぁ……はぁ…………おはようじゃないよ何すんの!?尻尾の先は変な感じがして変な気分になるから触らないでって言ってたじゃん!」
お陰様でなんか色々変な感じだし!
「ごめんごめん、だからそんな怒んないで鈴ちゃん」
ちっとも悪いと思っていなさそうなちー姉を前に、いきなりとんでもない方法で起こされた僕は布団を跳ね除け、息を荒くして尻尾や翼をピンと伸ばしていた。
「それはともかく鈴ちゃん」
「なに!?」
まだ変な事するならいくらちー姉でも部屋から放り出すよ!?
「今の時間、見てご覧?」
「時間ー?」
時間ならえーっと、9時54分だけ……ど…………
「……寝坊してるぅー!?」
「大丈夫よ鈴ちゃん、今日は鈴ちゃんおやすみするって私が学校に電話入れといたから」
「それならよかった……いや良くないよ!何勝手にやってるのさ!?あーもう!今からでも遅くない、早く着替えて学校に─────」
「そんなちょっと隆継くんの前には出せないような感じなのに?」
「……?えっ!?あっ!……はぁうぅぅ…………」
慌てて準備しようとフラフラする足で何とか立ち上がった所でちー姉にそう言われ、僕はどういうことかと姿見の方へ目をやる。
するとそこには頬を染めた誰がどう見ても恥ずかしいような、ちょっと危ない状態の僕が映り込んでいた。
そしてそんな自分の姿を見た僕はかくんと女の子座りで座り込むと、恥ずかしさから翼で自分を覆い隠す。
「幾ら冬眠仕掛けてたとはいえ、無理矢理起こす為に人間でいう性感帯を思いっきり刺激したんだから、変な気分にもなっちゃうかもね」
へ、変な気分?
「え、えと、このなんかよくわかんない感じのこと?ちー姉?」
「そうそう、そんなあーるでじゅうはちな……もしかして鈴ちゃん……自分でした事とか…………ない?」
あーるでじゅうはち?自分でした事?
「ご飯なら作ったことあるよ?それともお風呂洗い?」
「えーっと……あー…………うちの妹のそっち方面が純粋無垢過ぎて辛い……」
「えーっと……ちー姉?」
「鈴ちゃん、貴女はまだそういう事知らなくていいのよ」
「あ、はい」
そんなやり取りの後、何とか復活したちー姉にぎゅうっと数時間お布団の中で抱きついてもらい、何とか僕は落ち着く事ができたのだった。
が、しかしその日の夕方─────
「ただいまー」
「あ、おかえり隆つ─────」
「お、何とか冬眠から起きれたみたいだな鈴香……ん?どうした鈴香?おーい」
「はっ!ごめんごめん!ついぼーっとしちゃって!」
「大丈夫か?辛いならちゃんと休めよ?んじゃ俺は部屋に戻るから」
「うん、ありがとう隆継…………はぁー……」
なんだろう、なんか隆継見た時に思わずドキっとしてしまった。それに心做しかまたなんか変な気分に…………とと、いかんいかん!
さっ、晩御飯作んないと!美味しいの作るぞー!
隆継を見てなんだか変な気分になりかけていた僕は、ふるふると顔を振り料理へと取り掛かり始めたのだった。
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