第155鱗目:2日目!龍娘!

 僕の通わせて貰っている高校で行われる文化祭は三日に渡り開催される。

 そしてその開催日中、学生の為の初日以外では学校に多彩なお客様が招かれる。そして今日、その二日目で招かれるお客様というと……


「ありがとうございましたー!」


 よしっ、これであと少しすれば一旦休憩に入れる!


「席が開きましたので、次でお待ちのお客様中へ」


 んー!回転率が凄まじい!さて次のお客さんは──────


「鈴ちゃ〜ん♪」


「…!ちーねぇー!」


 僕よりも幾分か背の高いその見慣れた姿を見た僕が歓喜に満ちた声を上げると、その人はこちらにかけより僕をむぎゅうと抱きしめる。


「いらっしゃいちー姉!今日は楽しんで行ってね!」


「もちろんだよ!たーっくさん楽しませて貰うからね!」


 そう、二日目のお客様は生徒達の関係者、つまり生徒達の家族なのである。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ふぅ、美味しかったし皆可愛かった〜」


「来たんなら呼んでよちー姉、そしたら校門まで迎えに行ったのに」


 せっかく来てくれるんだからそれくらいは…………ん?


「仕事ほっぽり出してまで来そうだからやめといたんだよ。さてそれはそうと…………鈴ちゃん?どうかしたの?」


「んーん、なんでもないよ。それで?」


「えっとね、今日お姉ちゃんねー─────」


 何かを感じ窓から見えるビルの屋上に視線をやっていた僕は、気の所為だろうと顔をちー姉の方に戻し、楽しそうに喋るちー姉の話を聞く。


「─────に行きたいなーって」


「勿論だよちー姉!回れるだけ回ろっ!」


「いいの?でも鈴ちゃんも持ち場とかあるんじゃ……」


「いいよいいよ!」


 だって───────


 ーーーーーーーーーー


「千紗さんと一緒に歩き回りたい?」


「うん…………ダメ?」


「別にいいわよ」


「え!?いいの!?」


 絶対ダメだと思ってたのに!


 文化祭初日の片付けの最中、手を合わせきゅっと目を閉じてさーちゃんにお願いしていた僕は、あっさりとOKをもらい拍子抜けする。


「で、でもお客さんの目的って僕でしょ?やっぱりいた方が……」


「最初はそれが目的だったんだけどね、正直鈴の集客力が凄すぎて他のクラスからクレームが来るレベルだったのよ」


「あー……」


 それはもう……申し訳ない。


「というわけで明日明後日は余計に人が来るし、鈴は前半の3分の2くらい働いてくれれば充分だから」


「はーい」


 休みが貰えるのは嬉しいけど、それはそれでちょっと不服ー。


「それに鈴が歩いてるだけで宣伝にもなるしね」


 ーーーーーーーーーー


「こういうことがあったから」


「あはははは……まぁ確かに、人凄いもんねぇ」


「ねー、もう慣れたけど相変わらず皆見てくるよ」


「それは鈴ちゃんの仮装も関係あるんじゃないかなぁ」


「う、うるさいなぁ……僕だって好きで着てる訳じゃないんだから」


 というかこういうのはまずもっとスタイルのいい人が……そう、今僕の横にいるちー姉とかがする格好だよ。


 僕はむすぅっと頬を膨らますと、丁度自分が映っている廊下の鏡へと目をやる。

 そこには真っ赤な生地に金で龍の刺繍が入った服を見にまとい、おでこにはそれらしい札を貼り付けた翼と尻尾のあるチャイナ服のキョンシーが居た。


「でもすっごい似合ってるよー!うん、かわいいかわいい!」


「素直に嬉しくなーい、というかほら!時間なくなっちゃうよ!早くお店回らないと!」


「そうだね、それじゃあ道案内お願いね。鈴ちゃん」


「任せてちー姉」


 僕はそう言うとちー姉の手を取り、楽しげに足取り軽くちー姉と共に歩いていくのだった。

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