第154鱗目:料理大会!龍娘!

『みんなー!盛り上がってるかーい!』


「「「「「「「「おぉおー!」」」」」」」」


『文化祭!楽しんでるかーい!?』


「「「「「「「「うぉぉおー!」」」」」」」


『さぁいよいよこの時間がやってきた学年出し物!みんな全力で楽しむ用意はいいかい!?』


「「「「「「「「おぉぉおおお!」」」」」」」」


『いいねぇ!それじゃあ1日目!一年生主催料理大会!開幕だ!』


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「す、凄い気迫だね……さーちゃん」


「そうね……本当にそうね……」


 ここからでもわかる舞台前の盛り上がりに、そう話す僕とさーちゃんだけでなくステージ袖で控えていた全員は気圧されていた。


『さぁそれではいよいよ選手の入場です!まず最初に我々を楽しませてくれるのはこいつら!学校にも慣れたか?今年はすごい奴もいる、新1年生達だ!』


「「「「「「「「うぉぉぉおー!」」」」」」」」


 とうとう来たー!!

 い、いや……落ち着け僕、いつも通り、そう落ち着いていつも通りやればなんの問題もないんだから……


「鈴」


「んう?」


「今日の晩御飯は?」


 晩御飯?えーっと確か冷蔵庫の中に結構野菜あったからそれ使うとして、隆継が喜ぶようなお肉があるのにするなら……


「ロールキャベツとコンソメベースの野菜スープ、それと白ご飯くらいー……あっ」


 そうじゃん、ある食材から作れる物を作ればいいだけじゃん。


「ふふっ、どこでやる事になっても料理はそんなものよ。さ、行きましょ?」


「うん、そうだね。いこっ!さーちゃん!」


 さーちゃんに言われ改めてこの試合で僕が何をすればいいのかわかった僕は、そう強く返事を返すとステージへと他の参加者と共に上がるのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ま、間に合った……」


 なんとか試合開始前に来ることが出来たぞ……


 ぜぇはぁと息を切らしながら、屋上を移動して行った鈴香達と違い全力で解除まで走ってきた俺、隆継は後ろの席へとどかりと座る。


 鈴香の力なら1人持つのも2人持つのも変わらないだろうから俺も一緒に連れてってくれればよかったのに……

 いや、それだけ焦ってたんだ。仕方ないさ。っと話をすればだな。


『さぁさぁさぁ!続々と料理の腕に自信のある挑戦者達が入ってくる中……おぉっとぉ!入ってきたは彼ら一年生の顔!大きな翼に長く太い尻尾!時折見るほにゃっとした笑顔に何人の男子が魅了されたか!尻尾と翼を触りたい、可愛いかわいいKAWAIIの三可愛いで今年度彼女にしたい生徒トップ5にも入った一年三組天霧鈴香選手だ!』


 わァァと盛り上がる会場を前に、そんな説明を受けた当の本人であるステージに上がった鈴香は、一瞬ぎょっとした顔になった後耳を真っ赤にして顔をうつ向けていた。


 おー恥ずかしがってる恥ずかしがってる、それに今絶対内心「なんだよそのランキング!」って突っ込んでるだろうなぁ。

 というか─────────


「いくら推薦されたとは言え、あいつらの料理のレベルだと嗜んでるとか手伝ってる程度のヤツじゃ相手にもならないだろうなぁ」


 俺はそう呟くと、これから始まる料理大会の展開を思い浮かべ、1人苦笑いを浮かべつつ他選手に目をやり────────


「それにしても、あの金髪っ子目立つなぁ……なんのキャラだ?」


 そう呟いたのだった。


 ーーーーーーーーーーーー


 開会式的なのから数時間後、難無く決勝に進んだ僕達は開始のゴング……ではなくベルを合図に同じく決勝に進んだ各チームと料理を始めていた。


「さーちゃんそっちどう?」


「いい感じに沸騰してきたわ、茹で始めるわよ」


「ん、お願い」


 それじゃあその間に僕はデザートの下準備を進めようかな。


 トントントンと包丁でリズミカルな音を立てて具材を刻みつつ、開会式で顔を真っ赤にしていたのが嘘のように、僕はいつも通り料理をしていた。


「でもまさか学年戦を勝ち上がれるとは思ってなかったなぁ」


「あら、鈴はアタシと一緒じゃ不安だったのかしら?」


「む、さーちゃんのいじわる。そんなわけないじゃんか」


 逆に一緒に来てくれるのがさーちゃんじゃなかったら絶対に出なかったと思うくらいだし。


「でもまぁ当然といえば当然よね」


「どうして?」


「普通アタシ達の歳でレシピとか見らずにここまで作れる子はなかなか居ないって話よ」


「でもさーちゃんできるじゃん?」


「そりゃあ、鈴に料理の腕で負けてるなんて…………女子として悔しいじゃない?」


「ふふふっ、なるほどね。さーちゃんも可愛いところあるじゃん」


「余計なお世話よ」


『1年代表チームの2人、とても仲睦まじくまるで姉妹のように楽しそうに料理をしている!これは目の保養、あっいや、料理の方にも期待が積もります!』


「姉妹だってさ、鈴」


「僕がお姉ちゃんかな」


「逆じゃないかしら?」


「ふふふっ」


「えへへっ」


 解説さんの台詞を聞きつつ、僕達はクスクスと楽しげに笑いながら料理を続け、そして───────


「いやー、惜しかったな」


「最初はどうでもいいって思ってたのに、今だと負けて割と悔しいと思う自分がいる」


「まぁでも相手は料理部の部長副部長だったらしいし、負けても仕方ないわよ。それにタダ券沢山貰えたじゃない」


「まぁねー」


 残念ながら惜しくも2位という結果になった。


「というかさ2人とも」


「ん?なんだ」


「何かしら?」


「あの解説の人?が言ってた彼女にしたい生徒ランキングってなに?いつの間にそんなの開催されてたの!?」


 全く知らなかったんだけど!


 掴みかかるようにして2人に僕が今1番気になっていた事を問いただすと、2人は露骨に目を逸らしてその内容を話そうとしない。

 そんな2人を見て僕はムスッと頬を膨らませると、ぷいっとそっぽを向く。


「むぅー、今日はいじわる多めだ」


「でもこういうことって」


「鈴が嫌がると思って」


「うっ……まぁ、確かにそうだけど……でも───────」


『本日の文化祭終了まであと1時間となりました。生徒の皆さんは二日目に備え、準備や片付けを開始してください』


「もうそんな時間か」


「早いものね。という訳で鈴、この話は一旦ここでおしまい、家に帰ってから話しましょ」


 むぅ……色々と不本意だけど、もう時間来ちゃったし…………


「仕方ない、でも帰ったら絶対教えて貰うからね!」


 こうして、そんな話をしながら文化祭1日目は幕を閉じたのだった。

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