第149鱗目:冬の朝、龍娘!

「んむっ」


 ……ぷにぷになのがほっぺたに…………


「みぃー」


「起こしに来てくれたの……?こまはいい子だね〜」


「みゃー」


 顔をぺちぺちと叩いてくるこまの頭を撫でてやりながら、くしくしと目を擦りつつ起き上がった僕はいつも通り翼を広げて伸びをする。


「さむっ」


 ここ最近冷え込んで来たなぁ……文化祭が終わったらちー姉と毛布とか買いに行くのもいいかもなぁ。


「さて、着替えないとね」


「みー」


「んー?もっと撫でてって?仕方ないなぁ〜♪」


 へにゃーっと顔を緩ませ、僕はこまの頭や背中を撫でてやりながら、器用に尻尾を動かしてクローゼットから着替えを取り出す。


「僕着替えないといけないから、こまは先にリビングに行ってご飯貰っておいで」


「みぃー」


 ご飯って聞いた途端、はしゃいだ様子でトテトテ歩いていくの可愛いなぁ……さて。


「いい加減着替えなきゃね、寒いけど。」


 とりあえずパジャマを脱いでー…………寒いから脱ぎたくないなぁ……


 そんな事を思いながらも、渋々ともこもこパジャマを脱いだ僕は、尻尾にかけた服を机の上に置いて着替え始める。


「ん〜……しょっと」


 うへぇー……やっぱりこのタイツのピチってした感覚慣れないや……でもこの裏起毛?っていうやつのおかげかすっごい暖かいんだよなぁ。

 尻尾の付け根の所に当たってて変な感じだけど。

 とりあえず、翼に当たらないようにシャツを着てからスカートに尻尾を通してから履いて、後は上からブレザーを羽織ればー。


「着替えかんりょーっと」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おはよう鈴ちゃん、ちゃんと着替えられたみたいだね」


「おはようちー姉、どう?変な所ない?」


 着替え終わってリビングに来た僕がそう言ってちー姉の前で背中を見せたりすると、ちー姉は少し触ったりした後に満足そうに頷く。


「うん、バッチリだね。尻尾と翼も問題無く動かせるみたいだし、それに上手い具合にブレザーで翼と尻尾の穴も隠れてるしね。はいチーズ」


 パシャリ


「もー、また写真撮って」


「だって似合ってるんだもの〜、私としてはもうちょっとスカートの丈が短くていい気がするけどねー」


「それは本当に勘弁して欲しい」


 冬服まで夏服と同じ悲劇は辿らずとも良い。それに寒いのは勘弁してほしい。


 10月も後半となった今日、いよいよ制服も夏服から冬服へと衣替えが行われ、僕は全体的に黒くなった生地の厚い制服に身を包んでいた。


「おはよう鈴……あら、似合ってるじゃない冬服」


「えへへ〜、ありがとさーちゃん。冬服って思ってたよりも暖かいねー」


「おいーっす……お、冬服か。2人とも似合ってるぞー」


「全くアンタはいつも簡単にそんなこと言って。でもまぁ、ありがとうね」


「お、おう」


「ふふふ、さっ早い所朝ごはん作って皆で食べちゃおう……ってん?」


 何かに気がついたちー姉が視線を落とすと、そこにはじーっとこちらを見てくるこまが居た。


「みゃう」


「んー?こまも似合ってるって?よしよし、ありがとねー」


「んみゃうー」


「猫を撫でる鈴ちゃん……可愛いなぁ……尊いぁ……」


「なぁサナ、前々から思ってたんだが」


「えぇ、あんたの言いたい事は分かるわ。鈴ってやっぱり色々と人じゃないわよね」


「だな」


「うりうりー」


「みぃー」


 こうして今日もまたのんびりと一日が始まるのだった。

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