第148鱗目:知らない人、龍娘
ふ〜んふふ〜んふふふ〜んふふんふふ〜ん♪
「あ、天霧さん!昨日はありがとね!」
「は〜い♪また困ったら言ってねー」
「天霧さんこの間手伝ってくれてありがと!これお礼のクレープの券ね!」
「いいの!?ありがとー!」
やった!クレープのタダ券ゲット!
「いい事はするもんだねぇ〜♪」
出し物の準備をしているクラスの前を通る度に様々なお菓子や券を貰いながら、相変わらず働かさせて貰えない僕は暇つぶしに校舎をぶらぶらしていた。
でもさーちゃんに出し物の為の設営しか手伝うの許されなかったけどね。
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「ダメ」
「えー!なんでー!」
ペチペチと尻尾で地面を叩きながら僕は頬を膨らまし、毅然とした態度でダメと言うさーちゃんに猛烈に反抗していた。
「文化祭は皆でやるものって言ったのはさーちゃんじゃん!」
「確かに言ったけど、それはそれ、これはこれよ」
「ぶー、さーちゃんの意地悪。隆継からも何か言ってよ」
「おっとそこで俺か。だがまぁこればっかりはなぁ……」
「隆継も意地悪するの……?」
「あ、いや!そういう訳じゃ!ただ鈴香はこのクラスの象徴的なものだからさ、どうしても鈴香が参加すると全部お前中心になっちゃうんだよ」
「でも!…………ううん、ごめん……」
「ごめんね鈴、でも当日はたーっくさん頑張って貰うから、それまでの我慢……ね?」
隆継もかと既にしゅんと垂れていた尻尾や翼に加え、なぜ手伝えないか分かり尖った耳もしゅんと下げてしまった僕の頭をさーちゃんはそう言いながら撫でてくれた。
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そして今の僕は先程の通り────
まぁ皆でって言うやつなのに僕の好みにってなったらおかしいしね、それにそのおかげで色々貰えてるし結果オーライってやつですな。
「あ、この飴美味しい」
さっきまでのしょんぼりとしたテンションはどこへやら、上機嫌で鼻歌交じりに校舎内を歩き回っていた。
「災い転じて福となす〜ってね」
「きゃっ!」
「んう?」
今何か足を引っ掛けたような……あっ。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
廊下の交差点で何かに足をひっかけた感覚がした僕が目線を落とすと、足元で変な体勢になっている金髪の子がそこに居た。
そして僕がその子に慌てて手を伸ばすと────
「あ、ありがと……じゃなくて、貴女の手なんて借りませんわ!それにワタクシは貴女の敵でしてよ!」
とりそうになった僕の手を叩き、まるで屈辱と言わんばかりな顔でそう言ってきた。
敵って……演技かもしれないけどそこまで露骨に拒絶されるのは初めてな気がするなぁ。
でも凄いなこの子、流石にカツラとかだと思うけどキラッキラな金髪に真っ青な目、それに真っ白な肌、まるで外国人だ。
「えーっと……」
「なんですの?」
「その……コスプレ?すっごく似合ってるね。なんのキャラクター?」
こういうのをコスプレ?って言うんだよね。隆継から教えて貰ったから確かなはず。
「なっ……!コスプレじゃありませんわ!この髪は地毛ですの!地・毛!それにこの目もカラコンじゃないですの!」
「おー、キャラまで……なり切ってて凄いなぁ…………」
「なりきりじゃありませ・ん・の!ほら!」
隆継に毒されたなぁと思いながら、僕はそう言って頭を突き出して来るその子の髪の毛を少し引っ張るようにして触ってみる。
「あ、ほんとだ。カツラじゃない」
「ふふん♪ワタクシはおばあ様がフランス人なんですのよ♪だからこそ……本当ならワタクシが学年1番の有名人になるはずでしたのに!」
「えぇ……」
こ、これってツッコミ入れるべきなのか……?
「ですので!今回の文化祭でワタクシが貴女よりも目立ち!そして真の象徴はワタクシという事をしらしめるのですわ!」
「そ、そう……」
「ふっふっふっ……首を洗って待ってるがいいですわ!おーっほっほっほっ!」
「あっ!せめて名前くらい…………行っちゃった……」
あの金髪ちゃん、一体誰でなんだったんだろ……
名前を聞くまもなく高笑いを残して走り去った金髪ちゃんを、僕は両手いっぱいに貰った物を抱えたまま、ポカンとなって固まったのだった。
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