第150鱗目:幕開け!龍娘!

 あれから特に目立ったトラブル等は無く、順調に準備が進みいよいよ文化祭当日になった今日、僕は────


「ね、ねぇ……ほんとに今日一日これ着てなくちゃダメなの?」


「そりゃそうよ、この日の為に皆で作ったんだから」


「そうだよー!このお店に合う天霧さんの衣装考えるの大変だったんだから!」


 だ、だからって……


「こんなフリフリでフワフワしてる様な服着れるかぁ!」


 女子更衣室で悪魔やお化けなど様々なコスプレをしているクラスの女子達を前に、僕は大声でそう叫ぶのだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「とか何とか言いつつ、ちゃんと着てやる所が鈴香のいい所でもあり甘い所だよなぁ」


「笑うなら笑えぇ」


「いやいや、お前としては複雑かもしれんがすっげぇ似合ってるぞ。可愛くて」


「うあぁぁぅぅ……」


 隆継にそう言われ、真っ白な生地に沢山のレースやフリルがあしらってある、天使をモチーフとした仮装に身を包んだ僕は、これまた天使の羽みたいな被せ物を被せた翼を垂らしながら机に突っ伏してしまう。


「そもそも尻尾が生えた天使なんて居ないでしょ」


「確かにそんな天使は聞かないなぁ。名前とか聞かれたらどう答えるんだ?」


「スズエル」


「尽く手抜きだなおい」


 だって半秒クオリティだもん。


「なんならカエルでもいいよ」


「それは両生類、それにドラゴンは分類するなら爬虫類だ。というかお前は爬虫類以前に哺乳類だがな」


「本当に僕は哺乳類なのだろうか」


 ゲームに出てくる魔物とかそんな感じな気がする。


「少なくとも生物学的には哺乳類だな」


「その心は?」


「へそがある、あとついでにちく────っでぇ!?何すんだよ!」


「それ以上は言うでないぞ隆継、今回は相手が僕で誰にも聞かれてないからよかったけど」


「まぁ、うん、これは安易だったわ。すまん」


「分かればよろしい」


「にしてもハロウィン仮装喫茶とはなぁ」


「面白い案を考えつくよねぇ」


「だなぁ」


 そう言った僕と隆継が改めて教室を見ると、そこには吸血鬼や案山子など、可愛いから面白いまで様々な仮装をしたクラスメイト達がいた。

 そう、僕達一年三組の出し物はハロウィンの仮装をしたクラスメイト達が接客をする、時期的にもピッタリなハロウィン喫茶なのだ。


「でもまぁ、正直僕だけ2日目3日目で別の衣装があるのは勘弁して欲しかったなぁ」


「一部完全にネタに走らされてる男子の衣装よりマシだと思っとけ」


「既に半分死にかけの僕の男部分が更に死の間際になるけどね」


「まだ生きてたのか男の部分」


「失礼な、尻尾でビンタするよ」


「すまんかった」


「全く、僕のどこをどう感じたら女の子と思えるのか……とと、そろそろみたいだね。さっ、僕達も働くよ隆継」


「いやもうどこをどう見たとしても感じてもどう足掻いてもお前は女の子────っと、あいよ。さっさと終わらせよう」


 そうして僕達の騒がしい文化祭が幕を開けたのだった。

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