第147鱗目:帰宅、龍娘
「「「ただいまー」」」
「皆おかえりー、今日も遅かったね」
日も暮れてすっかり辺りは暗くなった時間、なだれ込むようにして玄関に入ってきた僕達をちー姉はそう言って優しげな笑顔で出迎えてくれる。
「まぁ文化祭まで後1週間を切りましたから、でも鈴が主な力仕事を全てやってくれたおかげで相当余裕が出来たんですよ。ね、隆継」
「だな、この間の1件で振り切れたのか知らないけど、活き活きとした顔で飛んだり飛び降りたりしてドラゴンの力を存分に使ってたもんな」
「うっ……だっていつもより動き回れるいい機会だったんだもん…………」
「まぁ鈴ちゃんって普段かなり力をセーブして生活してるからねー、今度思いっきり運動出来るよう三浦さんにお願いしてみよっか」
「ほんと!?ありがとちー姉!」
1度でいいから全力で動き回ったりしてみたかったんだよ〜!
「おーおーおー、あんなに尻尾ぶんぶん振るなんて、よっぽど嬉しかったんだな」
「みたいね。鈴ー、スカートがめくれちゃいそうよー……というかあれでセーブしてるのね」
「ふふふっ!さっ、皆ご飯出来てるからね、早い所食べちゃってゆっくりしよ!」
「「「はーい」」」
ちー姉にそう言われ、僕達は元気よく返事をしてリビングへと向かったのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お風呂上がったよー」
ふいー、さっぱりしたー。
「相変わらずもこもこしてるわねぇ」
「だって夜寒いんだもーん」
もふもふとした丹前をふわふわなパジャマの上から着た僕は、そう言ってもふもふな丹前を満喫しつつ蕩けた笑顔でちー姉にそう返す。
「そういやこまは?」
「こまは今日の夕方に叶田ちゃんに動物病院に連れて行って貰ったよー。明日暇みて返しにきてくれるって」
「そっかー……」
それは残念だぁ……今日もいっぱいお喋りしたかったのになぁ。
正式に我が家で僕が責任をもって飼うことになった子猫のこまが、今日は叶田さんの所に預けられているのを思い出し、僕は残念そうに尻尾を垂らす。
「それで鈴ちゃん」
「んう?」
「鈴ちゃん達は文化祭でどんな出し物するの?」
あーやっぱりそれ聞いてくるよねー……うーん、そうだなぁ…………
「なーいしょっ!」
「えー!教えてよー!」
「それは当日来てからのお楽しみだよー!」
「ぶー!鈴ちゃんのけちんぼー!」
む、頬を膨らませてるのは可愛いけど、そこまで言うなら〜。
「1ヶ月五百円生活…………する?」
「ごめんなさい」
即座に謝ったちー姉に僕はくすくすと笑いながらぐぐぐと大きく伸びをして、ぱたぱたと翼を動かしながらちー姉に他にどんな出し物があるかを話し始める。
「へー、料理大会やるの」
「うん、各クラスから2人選出されるんだって。僕は是非とも見るだけで済ませたいけど……多分選ばれるんだろうなぁ」
「あははははっ。まぁ料理なら鈴ちゃん上手だし何とかなるよ」
「なるといいんだけどねぇ」
「…………楽しそうね、鈴ちゃん」
「ふぇっ!?そ、そんな事………………ううん……楽しいよ、うん。すっごく楽しいっ!」
愛しいものを見るような、そんな顔で僕にそう言ってくるちー姉に僕はニッと笑顔を浮かべて本心を語ったのだった。
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