第138鱗目:作戦開始!龍娘!

「ん〜♪」


 あま〜い!美味し〜!柔らかくてもちもちしてて、ん〜〜もう最高!


「おぉ、すずやんの尻尾と翼が荒ぶっとる…………そんなに気に入ったん?」


「うん!ねぇねぇ、もう1個食べていい!?」


「すずやん可愛ええなぁ……ウチはここで待っとくから遠慮せず買ってきてええでー」


「やった!とらちゃんありがとー!」


 学校を出て真っ直ぐレンガ広場近くまで来た僕は目を輝かせながらとらちゃんにそう言うと、もう一度先程クレープを買った屋台へと向かい、今度はイチゴのクレープを買って戻ってくる。


「そういやすずやん、クレープ食べるのもええんやけど」


「んむ?」


 何かな?


「何か用事あるって言ってなかった?」


「んっ!」


 やばいっ!忘れてた!えーっとスマホスマホ……


「あった!」


 とらちゃんに言われ慌ててバックから僕が取り出したスマホには、案の定ちー姉からメッセージがいくつも来ていた。


 うわぁー、めっちゃ早く目的地に迎えって来てるよ……というか最後の「早く来なさい」って絶対金城さんじゃん!メール越しでも威圧感すごい。


「よ、よしっ!いこっかとらちゃん!」


 行かないと金城さんにシメられる!


「んお?もう行くん?せめてクレープ食べ終わってからでも──────────」


「んぐんぐ…………食べた!」


「はやっ!せっかく買ったんやからもっと味わって食べたらええのに」


 味わいたかったけどね!これ以上待たせると多分殺される!


「まぁそれはまた今度という事で……とりあえずほら!いこっ!」


 一息でクレープを食べ終えた僕は、そうしてとらちゃんの手を引っ張り、作成を行う場所へとかけていくのだった。

 背中に気持ち悪い視線を感じながら。


 ーーーーーーーーーーー


 よし、見えてきた。確か打ち合わせだとここの通りの入口に金城さんが────────


「ぶふっ!!」


「うおっ!?すずやんどした!?」


「ごほっごほっ!ごめっ!ちょっと……ぷくくっ……」


 その格好は卑怯だ金城さん……!女児アニメのキャラクターTシャツでサングラスに帽子って…………!普段とキャラが違いすぎてやばい……!


「よ、よしよーし……大丈夫かーすずやーん…………」


「あ、ありがとうとらちゃん……ふぅ、もう大丈夫。ふふっ」


 とらちゃんに背中を撫でられながらもなんとか立て直した僕は、仕切り直しも兼ねて翼を大きく1度動かし金城さん達に合図を送ると、少し緊張した面持ちでその通りへと入っていく。


「そういやすずやん、今日先生達が皆忙しそうにしてたけど。それとすずやんの用事ってなんか関係あるん?」


「んー……まぁ少しね」


 流石とらちゃん、こういう所にさらっと気が付くのは凄いなぁ。

 さて、まだちゃんと見られてる感じがするし、通りもそろそろ4分の1くらい歩く訳だし、多分もうそろそろ────────


「あんた、何やってんだ?」


「な、なんだね君は!?ワシはただ買い物に来ていただけだ!」


 きたっ!


「とらちゃんちょっとごめんねっ!」


 僕はとらちゃんにそう謝ると勢いよく声の聞こえた方へと振り向き、僕をつけていた犯人を逃がすまいと囲いを作っている協力してくれた人達の元へと走る。


「ほう、財布のひとつも持たずにか。それに物陰に隠れてコソコソとしてたじゃないか、何かやましい事でもあるんじゃないか?」


「はっ!証拠もなくそんな事を、ワシは貴様とは違って上の立場という物に着いているのだ!そう気安く触るなっ!」


 なんかこの声どこかで聞いたことがあるような……?いや、そんな事はどうでもいい、今は僕も協力して犯人を取り押さえないと!


「なら俺は教師として生徒を守らなければならない立場だ。さぁ、来てもらおうか」


「ちっ!話せと言っているだろう!」


「離せと言われて離すわけが無いだろう。ほら、こい!」


 とりあえずちー姉を探さなきゃ、ちー姉は……いたっ!


「ちー姉犯人は!?」


「鈴ちゃん!そこで今体育の先生が………………うそ……!なんでここに!?」


 僕が囲っていた人の中から見つけたちー姉に犯人を尋ねると、ちー姉は犯人の居る場所を指さし、その犯人の姿を見て息を飲む。

 そう、ここ数日僕をつけていた犯人は1度僕の逆鱗に触れ、暴走した際に引き連れていた私兵ごと叩きのめしたあの男。


 田上誠一郎だった。

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